昨年の10月

彼は1人の女性を尊敬し、その人のために自分を高めたいと思った。

その女性とは少しずつ仲良くなった。恐らく彼からの好意も知っていただろうし、女性からの好意を彼も感じた。

それでも彼らは結ばれなかった。
彼は結婚を控えていた。
結婚のことは隠すこともなく公言していた。

彼はその後、予定通り結婚した。
さぁ2枚目です。
いま、実家に帰って特にやることもなく、暇なのでカセットテープを再生しているのです。

さぁ2枚目。A面は特に何も録音しておらず。。

B面を聞くか。ポチ。

女「いま帰りやで」

男「あぁ、そうなん」

女「ふふふふふ(ほんとにこんな感じの笑い方)」

ここで僕は冷や汗が出て、カセットテープを切った。
うっすらと覚えている。というか忘れはしない。

高1のとき、僕はある女の子Kちゃんが好きだった。友達以上の関係で、一緒に蛍を見に行ったこともあった。
どっちかと言うとKちゃんが自分に合わせてくれていた感じがする。

僕が中国、四国地方の一人旅に行った時にはホテルに着いてから毎晩Kちゃんに電話していた。今日も何km自転車をこいでいたんだよーって。たまにその光景を思い出すが、僕の人生で一番の青春だった。気がする。

そこから細かい事情は忘れたが、結論から言うとお互いの気持ちが遠くなっていった。2年の時もクラスは一緒だったが、ぼくは周りの男子に違う子が好きだと言っていた。よくいじられていたので向こうも知っていただろう。
こんな書き方をしたら、ぼくが当時の二人の恋に酔っていたような見え方もするが、向こうも一線引いているのは学生の自分でもわかっていた。
高3になってKちゃんに彼氏ができたのを知った時も、特に何の動揺もなかった。へー、くらいに思っていた。
だけど、何か高3の秋ぐらいだったか、無性に感傷的になっていた時期があった。

そして、ぼくはKちゃんに謝りたくなった。

高3の自分の発想は謎で、電話口のところにカセットテープを用意し、録音していたのだ。

そして、Kちゃんに 電話した。

会話は上記の通りだが、その後、今までごめんとぼくが謝り、Kちゃんが「別にいいよー」と笑ってくれた気がする。 本当に優しい子だ。普通はいきなりこんなことを言われても意味がわからないと思うが、Kちゃんは、ぼくがKちゃんを好きだったことをその場で悟り、優しく笑ってくれたのだ。

カセットテープは聞けない。自分の声が余りにも気持ち悪かったから。そしてKちゃんの声が可愛かったから。

カセットテープは絶対聞けない。

ただ、このカセットテープはマル秘と書いて、大切に保管しておこう。