衆院選が終わり、結果を振り返ると自民党の圧勝という言葉がまず浮かぶ。中道勢力の惨敗が目立つ一方で、参政党やチーム未来といった新興・小規模政党の躍進、さらに国民民主党の健闘も印象的だった。多様な動きが見られたとはいえ、最終的に盤石な議席数を得た自民党の存在感は圧倒的であり、日本政治が再び「強い与党」を中心に回り始めることを示している。
安定政権がもたらすメリットは大きい。政策決定が迅速になり、外交や安全保障、経済運営において一貫した方針を打ち出しやすくなる。頻繁な政権交代や与野党の対立による停滞を嫌う有権者にとっては、安心感のある結果とも言えるだろう。しかし、その一方で、少数与党という形が持っていた価値も、今回の結果によって失われつつあるのではないかと感じる。
少数与党であった時期、与党は単独では政策を前に進められず、必然的に野党との協議や妥協を重ねる必要があった。立場や思想の異なる政党同士がテーブルにつき、修正や調整を行う過程は、時間こそかかるものの、多角的な視点を政策に取り込む契機となった。結果として、「どうせ進まない」と思われていた政策が、合意形成を経て実現した例も少なくない。
この経験を踏まえると、与党が圧倒的多数を握り、賛成多数で政策を次々と通していく状況には不安を覚える。議会は本来、単に数の力で物事を決める場ではなく、異なる意見をぶつけ合い、より良い結論を探る場であるはずだ。与党が暴走した場合、それを止める現実的なブレーキ役が弱まってしまえば、チェック機能は形骸化しかねない。
民主主義とは、多数派の意思を反映する制度であると同時に、少数派の意見をいかに守り、取り入れるかを問う仕組みでもある。少数の声が無視され、政策決定から排除されるようになれば、それは形式上の民主主義にとどまり、本質からは遠ざかってしまう。今回の選挙結果は、私たちに「安定」と引き換えに何を失うのかを考えさせる。
だからこそ重要なのは、与党が多数を得た今こそ、自らを律し、野党や少数意見に耳を傾ける姿勢を持ち続けられるかどうかである。強い権力ほど慎重さと謙虚さが求められる。国会内外での活発な議論、市民の監視、そして選挙による審判を通じて、民主主義を実質的なものとして維持していく必要がある。
今回の衆院選は終わったが、民主主義は選挙の日だけで完結するものではない。安定政権の利点を享受しつつ、少数与党が示した「対話と調整の政治」を忘れずにいられるか。その点こそが、これからの日本政治の成熟度を測る試金石になると考える。