2011年3月7日、僕たち夫婦は日本を離れ、ドイツへ向かった。
なぜだか理由を挙げればいくつかあるが、何か大きな確信ではなく、ほんの小さなきっかけだった。
2010年夏、僕たちは経営しているカフェを他の人に任せて、ドイツに移住しようと決めた。
たまたま見つけたドイツのホテルの求人に応募した。採用されるかどうかもわからない。結果の連絡すらなかなか来なかった。それでも、待つことが性に合わなかった僕たちは、「もう行こう。決まっていなくても、とりあえず行ってしまえばいい。」 そう考えた。
結果的に、この決断が僕たちの人生を大きく動かすことになった。
応募サイトには、採用の流れが詳しく書かれていた。応募から約2ヶ月で決まる、と。しかし、1ヶ月が過ぎ、2ヶ月が過ぎても、何の連絡もなかった。
そこで僕たちは待っている時間を無駄にしないように動いた。
• ドイツ語の履歴書や職務経歴書を用意する。
• 日本の調理師免許を証明する書類を翻訳してもらう。
• 渡航に必要な手続きや情報を整理する。
そしてようやく、ホテルから連絡が来た。
「第二次選考に進みます。」
Skype面接を受け、さらに進んで、2010年12月には「第三次面談へ」と連絡があった。
年が明けて2011年1月、最終面接を大阪で受け、「数週間以内に採用・不採用を連絡します」とのメールが届いた。
この時点で、僕は「これはいける」と確信していた。手応えも悪くなかったし、雰囲気も良かった。
しかし、1月が終わり、2月になっても連絡は来なかった。
この時点で、多くの人は「もう少し待とう」と考えるかもしれない。
でも、僕たちはそうしなかった。
「もう行こう。行くなら、あのホテルに泊まろう。僕が働くことになるホテルなのだから。」
そう決めた。
僕たちは1月31日をもってカフェの運営を他の人に任せ、3月7日に飛行機でドイツへ飛び立った。フランクフルトで一泊し、3月8日、デュッセルドルフに到着。
ホテルへ向かうと、Skype面談を担当してくれた方が迎えてくれた。
そして、彼は申し訳なさそうにこう言った。
「大変申し訳ございませんが、不採用となりました。連絡が遅くなり、申し訳ありません。」
……。
でも、不思議と冷静だった。
僕は彼に笑顔でこう伝えた。
「不採用についても、最後まで面接してくださり、ありがとうございました。まずは拠点をデュッセルドルフに決められたのは、〇〇さんのおかげです。ここからが始まりです。このたびは1ヶ月間、よろしくお願いします。」
結果はどうあれ、すでに僕たちはドイツにいた。
つまり、もう動くしかなかった。
3月7日に僕たちは日本を出た。
そして、そのわずか4日後、2011年3月11日。
日本で、東日本大震災が発生した。つづく