ある雨のイブ 11 バーの外 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

11


坂本が振り向くと、ドアのところにカーキ色のモッズコートを着たひとりの男性客が立っていた。



「いらっしゃいませ」



にこやかに迎えたが、男の方は坂本を無視して、凛子を見ていた。



……



男は傘がなかったのか、フードを被っている。そのフードの端からパーマをかけた髪がのぞいていた。どこか世を拗ねたような雰囲気が漂っている。



凛子を見る男の目が鋭く光った。が、凛子はその客には目もくれず、急足でドアに向かった。



男の方は自分の横を通り過ぎる凛子をじっと目で追った。



揺れるピアス。アップにした髪。白いうなじ。背は凛子の方が高い。ファーコートの毛が男のコートに触れそうになった瞬間、目が合った。



凛子は無意識に流し目で男を見た。そして、すぐに目を逸らしてドアを押した。冷気に身をすくめる。



男は、首を回して、ドアから出て行こうとする凛子の後ろ姿を見送る。と、ふいに、男は踵を返した。



凛子の後ろ姿がドアの向こうに消えかかった瞬間、男は床を蹴った。





パシッ!



男の腕を捕らえたのは、坂本だった。



森田は振り向いて坂本を見た。



「何すんだよ」



「彼女のお知り合いですか?」



「は?」



「失礼ですが、お仕事は?」



「離せよっ」



「ラーメン屋さんではないですよね?」



「は⁇ふざけんな!離せっつってんだろ!」



「せっかくいらっしゃったのに、何も飲まずに帰るんですか?いったいうちに何しに



「離せっ‼︎



ガッ



森田の一発が坂本をぶっ飛ばした。坂本は床に倒れ込み、客が悲鳴を上げた。



森田はその隙にドアに向かって駆け出した。



坂本はよろよろと立ち上がると、カップル客に、



「ああすみません。今日はもう閉店にしますんでお勘定はけっこうですから」



と言うが早いか、森田の後を追って走り出した。



外に出ると、走っている森田の後ろ姿があった。その向こうには、タクシーを拾おうと通りに立っている凛子。傘は挿していない。



「お客さん!後ろ!」



坂本の叫び声に凛子が振り向いた。凛子は自分に向かって走ってくる森田を認めると、ハッとして逃げ出した。



「待てっ!」



しかし、すぐに追いつかれてしまった。凛子はとっさにキャリーバッグをブン!と放り投げた。それにぶつかり森田が転びそうになる。バランスを失った森田の後ろから坂本の手が伸びてくる。


坂本は森田のフードを掴んで後方に引きずり倒した。


バシャン!


水溜りに森田が尻餅をついた。


坂本は駆け出して凛子に追いつくと、


「こっちへ!」


と凛子の手を引いて走った。



「待て!」


森田はすぐに立ち上がって、ふたりを追いかけた。