この関係をなんと呼ぼうか 9 剛健の会話 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

9


ハンバーガーを手に持ったまま、俺は上空から目を離さない健に話しかけた。



「お前さ



ん?」



まだ大尉の戦闘機を見てやがる。こっち向けよ。



「暇なんだな」



ガブッとハンバーガーにかぶりつく。



「フッ。剛もね」



もぐもぐ。ごっくん。コーヒーを飲み、ストローから口を離した。



「俺は彼女にフラれたばっかだから」



あ。言っちゃった。



「アハハ!やっぱフラれたんだ」



健はやっとこっちを見て笑った。



「人の不幸を笑うな。お前こそ休みの日に基地来るなんて、彼女持ちのすることじゃねーよな。いないんだろ?」



「ご想像にお任せします」



「この秘密主義が。あ。ひょっとしていないんじゃなくて、彼女がいるから基地に来たのか?」



俺はチラッと上空の戦闘機に目をやった。



健はフッと笑って後ろを振り向いた。椅子の背に肘をかけ、髪をかき上げる。



「見て。ハナミズキ、きれいだね」



「ごまかすなって」



「ごまかしてないって!」



「大尉と付き合ってんの?」



「付き合ってないって!」



「ふたりで示し合わせて飛びに来たとか。お空デート」




「戦闘機デート?オタクっぽいなそれ!」



健はアハハ!と笑った。



「付き合ってないにしても、好みだろ?ああいうの」



「うーんどうかな」



健は目を伏せてアイスコーヒーのストローを咥えた。



「まあでも向こうは俺のことよく思ってないみたいだよ?」



「なんでわかる?」



5班に異動になったから」



「大尉の意向?」



「たぶん」



「でも昇級したんだから評価は高かったんだろ?」



「評価が先か異動させたい気持ちが先かはわかんないだろ」



「何それ。なんか嫌われるようなことしたの?」



健はそれには答えず、頬杖をついて遠くを見た。



しばらくして、



「異動になる前に、5班のアフガン行きは決まってたんだよなぁ



と呟いた。



紛争地域はどこも危険だが、アフガンは国際平和軍もテロに遭う特に危険な地域だった。



「それって危険な任務に着かせたいほど嫌われてたってこと?ハッ!まさか。あの大尉がそんな陰湿なことをするとは思えねーよ」



「うん。まあ、さすがにそこまでは考えてないと思うけど。それに異動先の決定権まで大尉にあるわけじゃないし」



「だよな」



「まあ剛は気に入られてるみたいだからさ



「は?なんで?」



「だって



「あ



俺は辺りを見回し、身を乗り出して健の方に顔を近づけ、声をひそめた。



「一昨日の話?」



一昨日健に聞かれて、大尉と寝たことを否定できなかった。



「一昨日?」



「金曜の夜」



「やっぱヤッたの?」



「ヤッてねーよ!バカ!上司とできるか!」



「でもお前



「一昨日はヤッてねーって!ヤッたのは配属前!たまたま、偶然、飲み屋で知り合って



「お互い誰か知らなかったの?」



「だって配属前だから知るわけねーじゃん!」



「マジかよ」



「マジマジ」



「偶然?」



「偶然!」



「ナンパ?どっちから?」



……



どっちだ?



俺はすっと健から離れ、椅子にもたれてコホンとひとつ咳払いをした。



「その日は、ちょうど彼女にフラれた日で



と、首の後ろを撫でさする。



「むしゃくしゃしてたんだ」



「まあうん。酔っ払いたい気分になって



「酒に逃げるつもりが、コトがコトだけに、女にも走ってしまったと。剛、」



「ん?」



「ベラルートって売春合法なの知ってる?」



「知ってるよ!女買えばよかったのにって?いや、そんなつもりで街に出たんじゃねーんだって!」



「なんでフラれたの?向こうに彼氏でもできたの?」



「うっ



「図星だ。剛は一途だからね。滅多に自分からはフラないでしょ」



得意げな顔をして腕を組み、胸をそらせる。



「知ったふりすんなよ」



「知ってるもん」



健は髪をかき上げ、上目遣いで俺を見ながらストローを咥えた。