ラストノート 19 偶然とか運命とか | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

「なんだよ。言いかけてやめるとか、そういうの一番気持ち悪いんだよな」


「あ、そう」


「『あ、そう』じゃねーよ。言えよ」


「酔っ払ってるからさ、今、俺」


「俺もだよ」


「変なこと言っちゃうかも」


「だから言いかけてやめたの?」


「たぶん、そう」


しばらく、黙って歩く。


「なに?」

健がチラッと俺を見る。


「え?」


「だから言いかけてやめたこと」


「だから、やめたんだって」


「言えって!言っちゃった方がいいよそういうのは。酔った勢いでさ。どうせ俺も酔っ払ってるから、今がチャンス!」



「なんで?」


「聞いても、明日には忘れてるから」


「酔ってるから?」


「うん」


「そっか」


「うん」


なんか笑いが込み上げてきた。


「何笑ってんだよ」


「いやいや…」


「早く言っちゃえ!」


「なんだっけなぁ…」


「え?」


「何言おうとしたか、忘れちゃったよ」


「は?ふざけんなよ。この酔っ払いが」


健がドン!と肩をぶつける。


「痛い痛い!」


よろけて肩を抑えると、また健が体当たりしてきた。


「危ない危ない!お前、こっち溝!溝に落っこちるだろ!」


「落ちろ落ちろ!」


うっれしそうにニコニコしやがって。こっちまで笑けてくるじゃねーか。


「危ないっつってんだろぉ!」


バカみたいにケラケラ笑いながら押し合いっこをして…側から見たら俺たちどうしようもない酔っ払いだぜ。


しばらくして、笑いもおさまった頃、健が自転車に跨った。


「じゃ、そろそろ乗ってくわ。奥さんより遅くなるのも嫌だからさ。ありがとな。付き合ってくれて」


「べつに」


礼を言われることじゃない。俺がそうしたくてそうしたんだから、礼を言われると、健のためにしたみたいで、照れ臭くなる。


健が片足をペダルにかけて、空を見上げた。



こんなに明るい夜なのに、強い光を放つ星は見える。


「なぁ…条」


「ん?」


「世の中はさ、ほんとはてんでバッラバラな偶然が、ばら撒かれてるだけなんだよな。この星みたいにさ」


「……どうした?大丈夫か?まだ酔いが覚めてないんじゃ…」


「このバッラバラな星をさぁ…昔の人は線で繋いでそこに意味を見出そうとしたんだよな」


「星座のこと?」


「うん。ほんとは線なんてないのに…」


健は続けた。


「そんなふうにさ、関係をつけたがるんだよな。人間って。ほんとはただの偶然が重なっただけなのに、そこに因果関係を見つけたり、それを必然だとか運命だとか思ったりしてさ…」