ラストノート 12 浮気現場 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

※本日2話目の更新ですニコニコ





聡美さんは一瞬ちょっと驚いたけど、すぐに余裕の笑みを浮かべ、色っぽく目だけで俺たちに挨拶した。


俺と健は、間抜け面して揃ってぎこちなく会釈した。


ゴツン。

「いてっ」

健と頭ぶつかった。


宝はというと、一瞥してから視線を外し、カウンターに向き直った。



「なに?浮気現場に遭遇⁇」


健がデコを抑えながら、声をひそめて言った。


宝はフッと笑って、


「仕事の相手だろ?」


ってカウンターに肘をついてグラスを傾けた。


落ち着いているのか、落ち着いたふりをしているのか…微妙なところだな。


聡美さんと男はカウンターの端に腰掛けた。


宝の椅子から3席空けて男が座り、壁際に聡美さん。


「不二子を死角に座らせたぞ。俺たちを警戒してんな」


健がヒソヒソ声で言うのを宝は無視する。


「イチャイチャし放題の良席」


「あのね」


宝がカウンターの上に手を置き、


「彼氏とこの距離だよ?」


って自分と聡美さんとの距離が近いことを両手で示す。


「浮気なわけないだろ」


「あの男のこと知ってんの?」


「…知らない」


「じゃ、なんで仕事の相手ってわかんだよ」


「スーツ着てる」



ふたりのやり取りを黙って聞いていた俺は、グラスを持ってる手の人差し指でちょっと男の方を指差し、


「あのスーツ…たっけぇぞぉ」


って呟き、ウィスキーを一口飲んだ。



健も乗って、


「オーダーメイドだな。生地がいい。ネクタイもオシャレ。自分に似合う物知ってるよね。ちょいワルオヤジって感じかな」

って俺に肩を寄せて囁く。


宝がさり気なく男の方を振り向いて、またカウンターに向き直った。


ふっ。気になってやんの。


「席替わってやろうか?」


俺の位置だと、話すとき自然に聡美さんたちの席が見える。聡美さんは男の陰に隠れてしまうけど、カウンターに置いた手や、体の傾け具合によっちゃ顔も見える。


「いいよ別に」


言うと思った。


「じゃ、実況中継してやるよ」


「いぃらないよっ」


「お前、仕事の相手が一番アブナイんだぞ?」


「そうそう。ここに一番アブナイ男が」


って健がニヤニヤしながら俺の肩に手を置いた。

桜のことか。ちっ。墓穴掘った。


「お前もだろ?」


「俺はゆかりが卒業してからだから」


「その前はっ」


「え?その前って?」


「油井のことだよ」


「ああ!油井薫!…いい女だったなぁ」


健が腕組みして上を見る。


「元気にしてっかなぁ」


まったく悪びれないところが健だな。


「俺の前任者?健くん、付き合ってたんだっけ」


「うん」


「な?やっぱ仕事の相手はアブナイだろ」


「んふふっ。それって仕事の相手がアブナイんじゃなくて、条くんと健くんがアブナイだけでしょ?」



「なんだよ。俺たちをただのスケベ男みたいにさぁ」


「そうだよ。健と一緒にすんなよ」


「は?一緒だろ?俺たち。一連托生」


「なに?イチレンタクショウって」


「これだから…。お前の頭ん中には、数学と女しかないのかっ⁇」


「と、健くん。でしょ?」


「なわけないだろっ!気持ちわりぃ。…あ!」


俺が身を屈めると、宝と健も身を縮めて俺の方に頭を寄せた。


「今、触った!」


「え?」


宝と健が一斉に男と聡美さんの方を見た。


またこっちを向いて、健が聞いた。


「どっちから?」


「男、男!」


「どこ触った?」


「肩、肩。こうやって」


俺は健の肩をポンと叩く。


「なんだ肩か」


健がつまらなそうにすると、宝がボソッと言った。


「なんだ、じゃないだろ」


宝のやつ、ちょっと不機嫌になってやがんの。