触れたくて 18 桜の傷口 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

*本日2話目の更新です。







からどうぞ。









「条くん…」


桜の手がそっと俺の腕に触れた。

俺たちは泣きながら見つめ合った。



「情けねーよ…ほんとに。…千帆は俺のために言ってくれたんだよ。『幸せだった』って。俺が『幸せにしてやれた』って思えるように…」




「最後まであいつに気遣わせて…俺…ほんとに…」





「…ばか…っ」



桜が俺の腕を揺さぶった。



「ばかだよ。条くん」



桜の目から涙がはらはらとこぼれ落ちた。



「信じてあげなきゃダメだよ!…ほんとに幸せだったんだよ。千帆さん」



「…でも…」



「でも、じゃないよ!…もしも条くんの気持ちを知ってたとしたら…だったらなおさら…幸せだったと思うよ?」



「なんで…っ…」



「だって…」



桜の顔がくしゃっと崩れた。




「それでも…条くんは…」



桜がギュッと目を瞑った。ぽろぽろ涙が溢れて、俺の腕に落ちた。俺の腕を掴んでる桜の手に力がこもった。





「千帆さんを選んだんだよ…」




「……」




「私じゃなくて…っ…」



桜が俺の腕を激しく揺さぶって、叫んだ。




「千帆さんを選んだんだよ…っ!…条くんは千帆さんを選んだんだよ!…千帆さんを愛したんだよ…っ!」



桜の言葉が俺の胸に突き刺さった。



「私が他の誰かのものになったって…それでもかまわないから…っ…千帆さんのそばにいたいって…私より千帆さんを離したくないって…そう思ったんでしょう⁈…そうなんでしょう⁈」


桜の言葉は、俺と同時に桜自身にも深く突き刺さったに違いなかった。


桜の傷口が開いて赤い血が流れている。


それは、俺がつけた傷だ。


「条くんに…そこまで思われて…愛されたんだよ?そんなの…幸せに決まってるじゃない!ばかだよ条くん。そんなこともわかってあげられないなんて…ばかだよ!」


ばかばかと叫んで桜は俺を叩いた。


「桜…っ…ちょ…っ…」


「条くんのばかっ!」


泣きじゃくって、髪を振り乱して俺を叩き続ける桜の手首を、俺はパシッと掴んだ。


両手を掴まれて動けなくなった桜は、見ていられないほどボロ泣きしてて…そのあまりの痛々しさに…俺は胸が詰まった。





俺が桜を捨てたことも

千帆を愛したことも

桜の言うことは全部真実で、


その矢は、俺と桜のどちらにも深く突き刺さって…この先も、決して抜けることはない。


それでも、俺たちは…一緒にいられるか?






君が願ってるよりも 

君はもう僕の全部で

どうぞ お望みとあらば 

お好きに切り刻んでよ



今ならば 流れる血も全部




その瞳から零れる涙は 

落ちるには勿体ないから

意味がなくならないように 

そのコップに溜めといてよ




それを全部 飲み干して みたいよ