桃の花 9 忘れられない | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

私の引越し先に向かう新幹線の中でも、私たちはあまり言葉を交わさなかった。



条くんは私を傷つけたと思って気を遣っていた。


ほんとは条くんは何も悪くない。

それなのに、私は条くんに謝らせて、傷ついた少女のふりをしている…。




確かに条くんは私を傷つけた。


だけどそれは、条くんが思っているように、私にキスをしたからじゃない。


むしろ、あのキスを無かったことにしようとしているから。


「忘れてくれ」と言った条くんの言葉と、あんなに熱く交わしたキスとの温度差。



どうして、私が嫌な思いをしたって決めつけるの?


一方的なキスじゃなかったじゃない。覚えてるでしょ?





私は新幹線に揺られながら、隣に座っている条くんをそっと盗み見た。

条くんは通路側の肘掛けに頬杖をついて、足を組んで座っている。

白いパーカーにベージュのチノパン。白のスニーカー。


カジュアルな服装をしてても大人の色気を感じてしまう。


髪を耳にかけた横顔。

頬杖をついてる指先が唇に触れている。




昨夜、その唇が私の唇を覆った。条くんの熱い舌が私の唇を割った。

深く潜り込んで私の舌を絡め取った。


思い出しただけで、体が火照るような…あんなキスを条くんは忘れられるの?


私は…忘れられないよ。


あのキスが私を傷つけたと本気で思ってるなら、それは、私の条くんへの気持ちを無視してるってことだよね?


条くんは私を子供扱いして、私の気持ちに気づかないふりをして…それで…無かったことにしようとしてる。


私にキスしてしまったことも。
私がキスを受け入れたことも。

それが悲しくて、悔しくて…




だけど、私のほんとの気持ちを条くんにぶつけるのも怖かった。


私も、条くんと同じ。


結局、無かったことにしようとしてる。



条くんは悪くないのに、罪悪感を抱かせてしまうのは申し訳ないけど、

だけど、条くんの罪悪感を拭うためには、私が条くんに抱かれたかったんだってことを認めなきゃいけなくて…


それは、多分、条くんにとっては、もっと困ったことになるんだろう…。