桜の蕾 16 桜の付き添い | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

※本日2話目の更新です。

15話 桜と千帆からどうぞ。






「ち、千帆さん⁇」


ハッとして千帆さんが苦しげに顔を上げた。

「あなたは…条くんの…っ…」


そこまで言ってまた苦痛に顔を歪めて丸くなった。


そのとき、背後から誰かの足音が聞こえた。


「どうしました…?」


その人はタクシーの運転手さんだった。


「大丈夫ですか?タクシー頼まれた方ですか?」


って千帆さんと私を見る。



千帆さんが、


「はい…。あの…」


と小さな声で、都内の女子校の名前を告げた。


あ。もしかして、桃ちゃんの…卒業式?


「そこまで…お願いします」



「いや…でも…」


運転手さんは戸惑って私を見た。


「千帆さん…でも…こんなんじゃ…」



「しばらくしたら、薬が効いてくるから…っ…。桃の…答辞…が…」


「桃ちゃんが、答辞読むんですか?」


千帆さんはコクリと頷いた。


私は運転手さんに向き直って、


「お願いします!」


と言って肩を借りた。


ふたりで千帆さんを支えてタクシーまで歩き、私は千帆さんと一緒に後部座席に乗り込んだ。


「桜さん…あなた…ヴィクトリー校の卒業式に…」


「ちょっとぐらい遅れても平気です」


遅刻の連絡を入れようとスマホを取り出したとき、千帆さんがウッと呻いて…次の瞬間、嘔吐した。シートが吐瀉物で汚れた。


「千帆さん…⁈」


千帆さんは青い顔をして呻いている。

桃ちゃんの答辞を見たいだろうけど…こんな状態じゃ学校まで行けたとしても、式場で座ってられないだろう。


千帆さんの病気のことが気になった。


「千帆さん、病院行きましょう!」



千帆さんも、青ざめた顔で力なく頷いた。


運転手さんにビニール袋やティッシュをもらって、苦しそうに吐き続ける千帆さんの背中をさすった。


「千帆さん!かかりつけの病院は?」


千帆さんは目を閉じてぐったりとシートにもたれ、答えられる状態じゃない。


「バッグ開けますよ?いいですか?」


返事を待たずに千帆さんのバッグを開けて、保険証と診察券を見つけ出した。



診察券を見て、ドキッとした。



「この病院で…いいですね?」



千帆さんが薄目を開けて頷いた。



「運転手さん、ここに…がんセンターに行って下さい!急いで!」