娼婦とジョージ 6 夢 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

ジョージは夢を見た。自分たちの土地を手に入れて、小さな小屋に住む夢を。牛とヤギを飼い、畑を耕し、大地の恵みだけで暮らす夢を。



大地の恵み。


何度も話すうちに、耳慣れないその言葉をレニーはいつのまにか覚えた。いつも、「恵み」の前で一瞬言葉に詰まったけれど。


レニーはジョージの言った言葉だけは覚えられた。

川の向こうに、レニーは自分たちの土地を見ただろうか。

ジョージ、見てるよ。


ジョージ…


ジョージ…



パァン…!という銃声の音にジョージはハッと飛び起きた。



「ちょっと…」


女の声がして、ジョージは裸でベッドの上にいる自分に気づいた。



「どうしたのよ…いったい…」


女はシーツで胸を隠して起き上がった。



「ひどい汗…。悪い夢でも見たのかい?」



ジョージは自分の両手を見て、それからその手で顔を覆った。



「…夢?…そうだ。悪い夢だ…。いっそ忘れてしまいたいよ…」



ジョージの声は震えていた。



「あぁ…あいつみたいになんでもかんでも忘れちまえればいいのになぁ…」



ジョージは顔を覆ったまま呟いた。



「あんた…。ねぇ…」


女はジョージの肩に手をかけて、


「先週は随分ご機嫌だったじゃないの。あの話をしているときは。なのに…いったいどうしたっていうの?」


と話しかけた。



ジョージは何も答えなかった。




「…泣いてるの?どうしてあの話をしちゃいけないの?」



ジョージは女の視線を逃れるように片手で額を抑えて俯いていた。


しばらくして、ジョージが言った。





「どうしてかって?…だって…あの話をする相手は…決まってるんだ」





ジョージの涙声に、女は眉をひそめた。




「俺と…あいつの夢だったんだ…。バカな夢だよ…。そうさ。叶うわけない…」




ジョージは首を横に振った。


「だけど…だけど…叶わなくても…よかったんだ!だって叶うわけないんだ。最初からわかってた。…俺は…」



一瞬額から手を離して鼻をすすると、ジョージは女と反対の方を向いた。

下がった眉。涙に濡れた瞳。


そしてまた片手で額を覆った。




「俺はただ…あいつと…っ…もっと…ずっと…一緒に…いたかったんだ…っ!」



ジョージの涙はもはや隠しようがなかった。


「ああするしかなかった…。そう思っても…っ…もしかしたら…別の方法が…あったんじゃないかって…。もっと…」



「ジョージ…」



「ずっと…一緒にいられる方法が…あったんじゃないかって…ひょっとしたらって…思わずにはいられないんだ…。だけどわかってる…ああするしかなかった。ああするしかなかったんだよ…っ」


女にはジョージが何を話しているのかわからなかった。けれども、ジョージの悲痛な気持ちは痛いほど女に伝わった。


女は我知らず涙を流していた。そしてガバッとジョージを抱きしめた。


ジョージは顔を覆ったまま女の胸に抱かれ、肩を震わせた。


しばらく、ふたりはじっとそうしていた。