夕顔 十九 光と闇 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

明け方、二条の自邸に帰り着いた源氏を女房たちは慌ただしく出迎えた。


「まあ…一体どちらにお出かけでしたの?」

「主上や左大臣様の使いの者が昨日は何度もお尋ねあそばしたものを」


「お顔色がすぐれませんわ」


「いかがなさいましたの?」


源氏はよろよろと自室に向かい、ただ「床の用意を」とだけ言ってすぐに横になった。


ほどなく、宮中より使者や公達が来訪した。


源氏は、葵の上の兄である頭の中将だけを招き入れた。


「やあ…いったいどちらへ雲隠れなさっていたのです?色好みの源氏の君」


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几帳の向こうに現れた頭の中将は、いつもと変わらぬ明るい笑顔で源氏に語りかけた。


何の罪も無い男とはこのように美しいものであろうか…。


夕顔の亡骸を抱きながら過ごした一晩に、源氏は己の罪深さを深く思い知った。


愛する女を死に至らしめたのは、欲情に流された己の浅はかな行動に違いなかった。


それは、二人きりになりたいと女を連れ出したことだけではない。父帝の寵妃を奪ったあの日にまで遡る。


なんと罪深く恐ろしい男なんだ…僕は。


光る君と呼ばれる自分の中に、一体どれほどの深い闇が潜んでいるか…世間は知らない。


主上にこれらのことが知れたら、この闇が自分の光を全て覆い尽くすだろう。



光る君の名は未来永劫、闇に葬り去られるのだ。



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頭の中将が座に着こうとすると、

「ちょっと…」

と源氏がそれを制した。


「実は…死の穢れにあって…」


「なんと」


死の穢れに触れた者を来訪する際は、座ってはならない。頭の中将は立ったまま、几帳の向こうの源氏と目を合わせた。


この頭の中将は、正妻葵の上の兄でありながら、男どうし気も合って良きライバルであったため、源氏の浮気には寛大であった。


だから、女が死んでさえいなければ、昨夜は女といたのだと正直に言っても、お盛んですなぁの一言で済む。


しかし、今回はそうはいかない。

人がひとり死んでいるのだ。


源氏は、

五条に住む乳母の見舞いに行ったら、その屋敷の下人が急逝してしまって思わぬ穢れに触れてしまったのだ

と、嘘をついた。


夕顔の女を失った悲しみのうちにも、こんな嘘をついて取り繕う自分に吐き気がした。


「そのせいかな。なんだか気分が悪くて…頭も痛い」


と言って眉間に皺を寄せ、頭を抑えた。


「わかりました。では主上にはそのようにお伝えしましょう」