スイートルーム争奪戦 16 宝と女 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

准に押された勢いで、一瞬背中が昌さんに触れた。


「そんなこと…」


思ってないわよ、と言う前に、


「ごゆっくり」


って准があたしたちに言って、後ずさる。


あたしは思わず昌さんと顔を見合わせる。


それからすぐに准の方を向くと、もうあたしたちに背を向けて体を揺らしながらカウンターに向かって歩いていた。



「ちょっと…!」


あたしの声を無視して、カウンターに座っているアオザイ姿の女の子の方へ近寄る。


隣に座っている男の人の肩をポンと叩いて、代われというジェスチャーをした。


綺麗な顔立ちをしたその男の人は、一瞬驚いた表情をしたけど、すぐに笑顔になって、スツールから立ち上がった。


彼は反対側にまわって、
すっと女の子の手を取ると、

身を屈めて恭しく彼女の手の甲にキスをした。


彼女がうっとりと彼を見つめる。


彼が優しくて気品のある微笑みを浮かべる。それから、お辞儀をすると、ロングジャケットの裾を翻して、出口に向かった。


その身のこなしの美しさに思わず見惚れてしまってから、ハッとして視線を准に戻す。


准はさっきまで彼が座っていたスツールに腰掛けていた。


パツパツのスーツの背中。肩の辺り。


後ろから見る准の横顔。


彼女を見つめる准の瞳。

長い睫毛。

スッとした鼻。


整った綺麗な顔が、
ふいに崩れて目尻に皺を刻む。


甘い甘い准の笑顔。


若くて綺麗な女の子の艶々光るピンクの頬。


笑顔で見つめ合うふたりを、あたしは複雑な思いで見守る。



彼女が何か言って、聞き取れなかったのか、准が片眉を上げて彼女の方へ体を傾ける。


彼女が准の耳元に唇を寄せる。

そっと准の肩に添えられた細い指。



ああ…。

そんなふうに触れたら…スーツの下の鍛え上げられた体がどんなか、いやでも想像しちゃわない?



彼女の手が右肩を滑って二の腕を這い、

准の肘の内側に触れる。



准がその華奢な手を見て、
左手をそっとその上に重ねた。



ふたりで重ねあった手を見て、

それから視線を上げて見つめ合った。