ドライブの続き 最終話 歩み寄り | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

枕に顔を塞がれた准が、はぐはぐって間抜けな擬音を発する。


あたしは、さらにタオルケットを掴んで准の胸におしつける。


「はい。今夜はリビングで寝てね」


「え⁇」


「え⁇じゃないわよ。反省が足りない」


「反省してるよっ」


「してるつもりでも、できてない」


「マジかっ⁇」


「マジです。いいじゃない。もうやることやったんだから」


「いや、そういう問題じゃ…」


「しかも2回も!」


「聡美っ」


枕とタオルケットを持った准の背中をグイグイ押して寝室の外へ追いやる。


「これ知ってたら、絶対やってなかったわよ!だから返してって言ったの!」


「いや…」


「おやすみなさ〜い」


ってあっかんべーしてドアをバタン!と閉めた。



ふふふ…。


あたしは頬を緩ませて、広いベッドにバフッと身を投げ出した。


情けない顔してんじゃないわよ。寝室を追い出されるくらい何よ。


こんな優しい彼女いないわよ。


ああ…悔しい。

いろいろ悔しい。


まったく…。


……。


ダメだ。目が冴えて、寝れない…。








しばらくして、ドアを開けてリビングを覗くと、准がソファで枕を抱いて胎児の姿勢でスヤスヤ眠っていた。


あたしは腕を組んで准を見下ろす。


やっぱりね。寝てると思ったわ。


そういう男よ。



悔しいけど…



だから




…好き。




嫉妬も不安もバカバカしくなっちゃうような准の平和な寝顔…。




あたしは、落ちてたタオルケットを拾ってそっと准にかける。




「そんな可愛い顔…あたし以外の女に見せちゃダメよ、准」


屈みこんで、准の唇にチュッてキスをする。


准がピクリと眉を動かす。


「聡美…?」


って眠たげに薄眼を開けて、腕を伸ばしてあたしを抱き寄せる。


「あ…」


ギュッと抱き締めて、少し鼻にかかった甘い声で、



「隙だらけの男で…ごめん」




隙だらけの男を好きになったのは…あたし。




「もうちょっと気を引き締めなさい」



「ん…」



「ん、じゃないっ」



「はい」



「女の子に優しくするのはいいけど、『ああ…宝先生、かっこいい♡』程度に留めとかなきゃ。本気で惚れさせちゃったら、優しさが罪になるわよ?」



「…俺の…問題?」



「あなたにも、問題がある。本気の片思いがどれだけ辛いか知ってる?」



「…たぶん…」



「じゃあその10倍女の子は辛いんだと思いなさい」



ああ…だけど…


確かに片思いは辛いんだけど…


准を好きでいるだけで幸せってこともあるか。


人を好きになる気持ちは、力をくれるから。

だとしたら、惚れさせることも善行と言えなくもないのか…。




「わかんなくなっちゃったな…」



「なにが?」


「いろいろ」


准があたしの顔を見て、愛おしそうに微笑む。



「一緒に寝よっか」



「狭いわよ」



「じゃベッドいこう」



「ダメ。じゃね、おやすみなさい」



あたしはスルリと准の腕を抜け出してリビングのドアに手をかける。



准がガバッと起き上がって枕をソファに投げつけて八つ当たりする。


「そうやってねぇ、すぐ仲直りしようとするとこが反省が足りない証拠よ」


ってドアから顔だけ覗かせて言う。


「歩み寄りは大事だろっ?」


ってソファにあぐらをかいて両手を広げる。


「こっちを歩み寄りたい気持ちにさせる歩み寄りじゃなきゃ、意味ないじゃない」


「普通、歩み寄ろうとしてるの見て、ああじゃあこっちも歩み寄ろうかなって思うだろ?聡美があみみよらっ」


「あははっ!あみみよら⁇噛んだ噛んだ!」


「指差して笑うなっ」


「あみみよってあげな〜い♡」


「わかった。もういい」


って枕を抱えてあたしに背を向ける。



「いいんだ。じゃね」


ってドアをバタンと閉めて寝室に向かう。


二、三歩行ったところでドアの向こうから、


「聡美ぃ〜〜っ」


って准の甘えた声が聞こえた。






fin.