元彼元カノ 17 聡美 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

電話をかけてきた彼女のアパートに行って、話を聞いた。

妊娠したかもしれないという相談だった。

とりあえず落ち着かせて、今の段階での彼女の意志や考えを整理して、今後の段取りをつけると、彼女のアパートを後にした。




「望まない妊娠か…」


あたしはため息をついた。



若いうちは、望もうが望むまいが、できちゃうんだなぁ…。


預かっている子がうちにいるときは、あまり考えないのだけれど、ちょうど今は誰も預かっていなかったので、ふと、赤ん坊のことに思いを馳せてしまった。


自分の子というのにこだわりはない。だけど、准の遺伝子は残さないともったいないなと結構真剣に思う。

准は笑うけど。




あたしは通りがかったタクシーをつかまえて、家路に着いた。


准の方が先に帰ってるかしら?

デザート食べるだけだもんね。



…それだけで、済むかしら。


思い出話なんかしてちょっと盛り上がって…。


腕時計をチラッと見る。


まぁ、それにしたってもう帰ってるでしょ。


元カノのもとに置いて来たのはあたしなんだから、帰りが遅くなれば、元カノと仲良くしていたことがバレちゃうわけだし…


それに…


准のことももちろん信じてるけど、あたしは、一目見ただけだけど、元カノの理性をなんとなく信じていた。


彼女には高校生の娘もいるんだし、准はその我が子の担任なんだから。


道を踏み外すような女性には、見えなかった。

真面目そうな人だった。


だからこそ、夢を見る時間があってもいいと思った。



准のことだからソワソワしちゃって、すぐに店を出ているに違いない。



帰ったら、『ごゆっくりって言ったじゃない』って、からかってやろうかなぁ。


『聡美がいないのにゆっくりできるわけないだろ?なんで置いてったんだよ』なんて言うかしら。


准の拗ねた顔を想像して我知らず頬が緩んだ。


やがて、タクシーはスピードを落として住宅地に入った。




「あ、そこで止めて下さい」



あれ?


タクシーの中から、明かりの灯ってない我が家を見て、あたしは初めてドキッとした。



まだ…帰ってないんだ…。





ふいに、准のまっすぐあたしを見る黒い瞳が思い出された。


真面目そうな彼女のどこか寂しげな微笑みも…。




彼女や准の真面目さが…間違った方向へ向かったら…?


いや、まさか…。


あたしはブンブンと頭を振って不吉な考えを振り払うと、玄関のドアを開けて、明かりを灯した。


先に帰った方がなんとなく寂しい気持ちになるのは、いつものことよ。


その代わり、准が帰って来たときには、家の明かりにホッとするに違いない。



うん。大丈夫。


お湯を張って、何か飲みながら、准の帰りを待つことにしましょう。