「このアンケートを書いたのが君なのかどうかって話でしょ?信用してるとかしてないとかじゃなくて、明らかに筆跡が君のなんだけど、どうなの?って聞いてんだよ」
橋本さんは、あたしから健ちゃん先生の方へ視線を移す。
こないだだって、『橋本さんがなりすましの被害に遭ってるみたいなんです』って心配して俺に相談して来たし」
ね?って、健ちゃん先生が腕組みしてあたしをチラッと見る。
え?え?
し、心配?相談?
先生にじっと見られて、
「あ、は、はい…」
って慌てて頷く。
「君のアカウントで条の画像投稿されてたらしいじゃん。普通は君だと思うよね?」
って健ちゃん先生が橋本さんを見る。
「でも、君が誰かにアカウント乗っ取られたって言うからさ、佐久間はそれ信用してー、君が誰かに悪意持たれてんじゃないかって、顧問として心配してたよ」
いや…そんなことは…。
先生は椅子にもたれて、足を組む。
「まあ、アカウント消えちゃったらしいから?今更だけどさ、今度またそういうことあったら言って?警察に調べてもらったら乗っ取った奴とかわかるし」
って髪をかきあげ、
「嫌でしょ?」
って言うと、橋本さんが首を傾げた。
「怖いじゃん。平気なの?誰かに悪意持たれてんだよ?心当たりとかないの?」
「…別に…悪意とか、そんなんじゃ…ないと思う…」
「なんでわかんの?」
橋本さんは黙り込む。
「別に…そんな深刻なことじゃないと思います…」
「なんで?なんでそう思うの?」
「…な…なんとなく…」
しばらく、沈黙が落ちる。
橋本さんの表情を見て、やっぱり、なりすましなんて、嘘だったんだろうなと思った。
『私が投稿しました』って白状させるまで問い詰める気だろうか?
あたしは先生の方を見る。
すると、先生はボールペンで机の端を軽く叩きながら、
「条だってさ…君のこと、信用してたと思うんだよなぁ」
って呟いた。