運命 7 所持品 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

呼び出した航空会社の人は、神妙な顔をしていた。

重体なのだろうか…。

俺は手の汗をズボンで拭った。


「ゆかり様の所持品と見られる物が見つかりましたので、ご確認頂きたく…」


所持品?


「…所持品…ですか?」


見つかったのはそれだけか?
ゆかりは?綾子さんは?


「どうぞこちらへ」


俺たちは、公民館に併設された建物に案内された。


その部屋には柩がいくつも並べられていて、泣き崩れる家族の姿があちこちに見えた。



まさか…。



ビニールを敷いた長机の前で、係の人が立ち止まった。



「こちらです」



見ると、俺がゆかりにプレゼントしたのと同じ赤いバッグがあった。泥だらけだった。



その横に、バッグの中身と思しき物が並べられていた。



財布

化粧ポーチ

ハンカチ

ティッシュ

ヘアゴム

ボールペン…


どれも、ゆかりのものだとはっきりとはわからなかった。



ふと、一番端に、花模様のチャック付きのビニール袋があるのに気づいた。


俺は、首を傾げた。


中に、何か入っている。


なんだろう…と思って、係の人の方をチラッと見た。


すると、白い手袋をはめた係の人が、どうぞ、とそのビニール袋を指し示したので、俺はそっと手を伸ばした。



ビニール袋の中には白い封筒が入っていた。


この封筒は…。


見覚えがあった。


俺はビニール袋のチャックを開けて、封筒を取り出した。


封筒の口から、指を入れる。


紙が指に触れた。


この紙の感触…。まさか…。



俺はそっと紙を引っ張り出して、折り畳まれたそれを震える手でゆっくり広げていった。



それは、確かに、ゆかりというより綾子さんのために、俺が役所でもらってきた届けだった。


『俺の誠意です』


そう言って、綾子さんに渡した。





広げた紙には、

あのときのまま…



俺が書いた自分の名前…。



そして、



当然空欄だったはずのその隣に





ゆかりの筆跡で



新城ゆかり



と、書かれていた。



ドクン…と心臓が鳴った。



指先に力が入らないゆかりの、
筆圧の弱い頼りない細い線。


ゆかりの名前を見て、

こんなにも胸に迫るものがあったことは、

今まで一度だってない。



手が、わなわなと震えた。




すると、背後から係の人が、静かに言った。



「こちらのバッグのすぐそばに…女性のご遺体がございました」



その言葉の意味を掴むのにしばらくかかった。



ゆっくり振り向くと、そこに二つの柩が並んでいた。







*ちなみに、健ちゃんにもらったボールペンでゆかりが字を書いたエピソードはしのぶれど色に出でにけりわが恋は後編でした。懐かしい…。