体育祭 7 借り人・健ちゃん先生 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

第2レースが始まった。

一番に駆け出し、カードをめくった佐久間さんが、くるっと振り向く。

そして、借り人の走者が並んで座っている所へ走って戻り、健ちゃん先生の腕を取る。


え?

先生なの?



は?俺?って自分を指差しながら引っ張られていくけんちゃん先生。


佐久間さんがかがんで、ふたりの脚を繋ぐ。


肩を組んで二人三脚で駆けていく先生と佐久間さん。


土を蹴って、息を合わせて、軽快に走る。




「さあ、佐久間先生、けんちゃん先生を連れて来ましたが?カードには何と書いてあったのでしょう」


生徒がカードを読み上げる。


「恩師!」


「まんまじゃねーかっ!」

って先生が笑う。


「佐久間先生、恩師けんちゃん先生とのエピソードを何か…」


「あ、はい。…えっと…そうですね。けんちゃん先生はほんとに、面倒見がいいというか…」


先生が、腕組みして照れ笑いしている。


「先生に励まされた言葉がありまして…それが、えー…高3のときと、それからつい先日も、同じことを言っていただきまして」


「なに?なんか言ったっけ?」


って右手で左耳の後ろを触る。


「はい。…あの、あたし昔からこんなんで、落ち着きないっていうか、ガチャガチャしてて、よく色んな先生に怒られたりしてたんですけど、さすがに自分でもちょっとおかしいのかなあたし…とか」


「おかしいおかしい」


佐久間さんが、え?って顔をする。


「いや、だっておかしいでしょ。普通に」


「せっかく今いいエピソード紹介しようと思ってるのに~」


「あ。ほんと?ごめんごめん」


「で、凹んだりしてたんですよ。高3のとき。そしたら、けんちゃん先生が『お前はそのままでいい』って…」


「言った⁇」


「言いましたっ‼︎」


「言ったかな。そんなこと。全然覚えてない」


って首をひねる。


「言いましたよ!こないだも『お前はそのままでいいんだって』って言ってくれたじゃないですか‼︎」


「あ。こないだ?言ったね。酔ってたからね。あのとき」


「はいっ⁇」


「前言撤回します!すみません!」

って観覧席に向かって頭をさげる。


「佐久間、お前、もうちょっと変われ。変わんなきゃダメだよ」

って佐久間さんを指差す。


「ええっ⁇」


息のあったふたりのやりとりに、どっと笑いが起きる。


…去年の体育祭より、キツいかもしれない。

先生と佐久間さんは向こう側で、あたしはこっち側にいるんだということを思い知らされる。

帰りたくなったけど、次は健ちゃん先生だから…それは見たくて。



『カードに書いてあるのが、可愛い女の子だったら、ゆかり、一緒に来てくれる?』


まさか…そんなことはないと思うけど…。