「あたし…初めてです」
「なにが」
「こんなに、誰かに親身に色々言ってもらったの…」
俺の肩にもたれているから、佐久間の表情は見えない。
「大人になると、自分とは違うタイプの人間に、そんな踏み込まないじゃないですか。あ、この人違うって。
間違ってても、教えてくれる人も少なくなって、なんとなく周りから浮いちゃう、みたいな。
佐久間はマイペースだからとか、佐久間は佐久間だからって、ほっとかれるっていうか」
「あぁ」
「こんなあたしに、ここまで付きあってくれて、踏み込んだ意見言ってくれたの、先生が初めてです」
「誤解するなよ。お前。それは、俺がお前の指導教官だからだよ?じゃなきゃ、ほっとくよ」
「指導教官って、普通、男の人との付き合い方まで指導してくれるんですか?」
確かに…。
「普通は、しないな」
「じゃ、どうして健ちゃん先生は佐久間にそこまでしてくれるんですか?」
「それは…佐久間だからだろ」
「え?」
って佐久間が俺を見上げる。
期待に満ちた佐久間のキラキラした目に一瞬たじろぐ。
しまった。
「バカッ。そういう意味じゃなくてっ。俺にとってお前が特別なんじゃない。お前は、みんなにとって特殊なんだよ」
「変わり者ってことですか?」
ってさっきまで輝いていた顔が急に曇る。
「早い話がそうだ」
「ひどいっ!先生のばかばかばかっ!」
って俺の胸をポカポカ叩く。
「酒乱かっお前はっ!」
って佐久間の両手首を掴んで制する。
手首を掴まれて俺を見上げる佐久間の一途な瞳に、ハッとさせられる。
そこから、涙が溢れ落ちる。
「なんで…泣くんだよ…」
まいった…。