ふたりの愛 13 | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

「レイプだって…されてたかもしれないんだ!一歩遅かったら…っ…」


ベッドに腰掛けた聡美が嗚咽しながら、胸を抑えて背中を丸める。


「聡美…っ!」


俺は聡美の前にひざまづき、はらはらと涙を流す聡美の頬に手を当てる。


「…なんで…っ…」


胸が苦しくて仕方なかった。誰か…なんとかしてくれ…。


「小学生の…家出してきた女の子を…」


幼い聡美の笑顔が目に浮かぶ。


「自分の手元に…置いとけるんだ…?」


聡美が襲われるところは痛すぎて、想像できない。したくない。


「…ろくに…守れもしないくせに…。自分だって…ガキのくせして…。…なんで…親元に返さない?」



マスターの罪は、間違いなく、そこだ。


少年のマスターにとって、聡美は宝物だった。だから離したくなかった。

その気持ちは、わからなくは、ない。


だけど、俺なら…俺がマスターの立場だったら…。


聡美が瞬きして、涙がポトリと落ちて光る。



「あたし…帰りたくなかった…」



「ばかやろう…。一緒にいて、幸せにできないんなら…守れないんなら…どんなに好きだって言われても、どんなに好きでも…」

言いながら、俺の目から涙が一筋伝うのがわかった。


「…手離すもんだ…」


それが、愛なんじゃないか…。

好きだから、そばに置いておきたい。そんな幼稚な執着を、俺は愛とは認めない。


俺は、さっきから、ベッドに腰掛ける聡美の前にひざまずき、聡美の両肩を掴んで聡美を見上げている。


聡美が祈るように両手で顔を覆い、辛そうに眉根を寄せて瞼を閉じる。



聡美の心が揺れている。


蘇った記憶。胸の傷痕。幼い恋。

そして、あのマスターの…魅力。


その全てをのせた大きな波が聡美の女心を飲み込んでいく。


裏社会に引きずりこまれる少女たちをほっとけない聡美の情の深さが、今、マスターに向けられている。


なんとかして、マスターの傷を癒してやりたいと思っているに違いない。


そして、それができるのは、自分しかいないと思い込んでいる。



だけど、あの人は、もう、少年じゃない。