もう明け方に近かった。
聡美が、一緒に朝寝しましょうと誘うので、シャワーを浴びてからふたりでベッドに潜り込んだ。
聡美の乳房の傷が朝の明るい光の中で、はっきりと見えた。
唇で傷痕に触れ、聡美の胸に顔を埋める。
「聡美…」
堕ちて行った少女たちのことを考えると、聡美を抱いても、気分は沈んだままだった。
聡美が俺の頭を撫でる。
「優しい人…。准…愛してるわ。…次は、あたしがひとりで話を聞きに行ってもいい?」
「俺…なにも知らなかったよ…」
「普通はそうよ。あたしも、取材するまでこの世界のことは、何も知らなかったもの」
聡美の胸をいじりながら、女という性について思いを巡らせる。
「マスターのこと…許せない?女として」
「…准は?」
「うーん。俺は…人は人を裁けないと思ってる。悪い人っていうのはいないんじゃないかって…」
「罪を憎みて人を憎まず?…ある意味、彼も被害者よね。…本当の意味で信頼できる大人と繋がれなかったのよ。10代のときに。高校生なんて、まだまだ子供だもの」
「…でも、信頼できる大人と繋がれなかった子供がみんな非行に走るわけじゃない」
「その通りね」
「…弱さ…なのかな…」
「…かもしれないわね」
「だけど…」
俺は聡美の胸の傷を指でなぞる。
「…裁くことはできないけど、心情的には、子供だからとか弱いからとか、そういうのを理由に、じゃあ仕方ない許してやろう、とは思えないこともあるよ」
「たとえば?」
「たとえば…子供の聡美を傷つけた奴を、俺は許すことはできない」