難題 5 痛み分け | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?


その夜、あたしは夕方のけんちゃん先生を思い出して、なかなか寝付けないでいた。

ベッドに仰向けになって、暗闇の中でそっと両腕を持ち上げてみる。

その腕の中に、あたしを見下ろす先生の顔がよみがえる。


あたしを抱き締めて、深く甘く、いつもより激しく…キスをした。

先生の熱に押されて、あたしも、積極的にキスを返した。

あたしを抱き締めた先生の手が、肩甲骨より上を撫でるときは感じるんだけど、

それより下、腰のあたりは何も感じないから、先生がどんなふうにあたしに触れていたか、正確には、わからない。



体、半分でしか、先生を感じることができない。



先生とのキスで、体の芯が熱く溶けて…先生にもっと、ずっと、触れて欲しいと思った。


あたしの全部、なにもかも、先生に溶かして欲しいと思った。


正体のわからない熱い激情があたしを襲った。



先生だって…。



先生の中の抑えきれない思いを、先生の息遣いから感じて、あたしは、やりきれなかった。


拒んでなんか、いない。


あたしも、先生を求めてる。



なのに、この体が、先生を半分しか感じられないこの体が…


…先生の愛を阻む。


先生のもったいないくらいの、溢れるような愛の受け皿が、あたしの中になくて、先生が…もがいてる。


もっと愛したいと思ってくれる先生の、その思いを叶えてあげられない自分の体が…憎らしい。



あたしは、自分の右手の甲を噛む。

鈍い痛みを感じる。

もっと、強く、噛む。


痛みが増して、うっ…って思わず呻き声が漏れる。


動け。動け。あたしの体…。
どうかして、先生を受け容れてあげたい。



痛くて呻く声が、いつの間にか嗚咽に変わる。


「愛してるよ」って言った後、あたしに覆いかぶさって、しばらくじっと動かずに、密やかに息を整えてた先生。


あのときの、先生のやるせなさ。胸の痛み。



あたしは、どうやって、先生の思いを叶えてあげたらいいの?



せめて、先生の胸の痛みを分かち合いたい。


だから…



もっと強い痛みを求めて

あたしは泣きながら

血が滲むくらい力を入れて

あたし自身を…噛んで、傷つけた。