難題 1 理屈で説明できないこと | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

「先生、無理~~!公式こんなに覚えられないよ!あたしには難し過ぎるって!難問難題!」


俺は丸めた教科書で、向かいに座っている生徒の頭をポカッと叩く。


「文句ばっか言ってねーで、さっさと解く!」


「えー?…えっと…これ、どの公式使えばいいの?」


「そっからわかんねーのかよっ」



椅子に反対向きに座って背もたれに腕を乗せてた俺は、身を乗り出して、順を追って説明する。


「あ!そっか!わかった!今初めてわかった!…先生、もっと早く言ってよ」


「授業でとっくに言いましたけど?」


俺は腕時計を見る。


「はい。時間だ。今日はここまで。あと自力でなんとかしろ。テスト初日だからな。ケツったら許さねーから」


「あーもうむりむりむり!」


「だいたい公式なんて覚える必要ねーんだよ。理屈がわかってりゃ」

「理屈がわかってたら、欠点とらないって!」


「あ。そっか。まぁ…理屈の通らねーことも世の中あるし…」


「え?」


「ああ、いやいや…。ま、頑張って」


俺は足を上げて椅子から立ち上がる。

「先生…」

生徒が上目遣いで俺を見上げる。


「ん?」



「欠点とらなかったら…ご褒美ちょうだい?」



「それはこっちのセリフだバカ」


って俺は丸めた教科書で頭をポンッて叩いて自習室を出た。



条件部屋を開けると、健が机に向かっていた。


「なんだ。来てたの?」


「あれ?そっちこそなに?あれ?」


って健が嬉しそうな顔して、ペンを持ったまま立って俺んところへ来る。

俺は無視して、ソファに座って数学雑誌を手に取る。

「あれあれあれ?」

って言いながら、俺の隣に座って俺の顔を覗き込む。

俺は健の手からペンを奪って、雑誌の問題を解き始める。

健が雑誌と俺の間に顔を割り込ませる。

「なんだよっ」

「ゆうべお楽しみじゃなかったの?」

俺は問題を解きながら適当に健の相手をする。

「なんだよいきなり。朝っぱらから学校でする話?」

「いやだって上野んとこ行ったんだろ?昨日。朝っぱらから学校来てるってどういうことよ。休みなのに」


「うるせーな。補習だよ補習」

「ふーん…」

「お前こそ、何しに来てんだよ。土曜はデートじゃないんすか?けんちゃん先生」

「いやぁ。最近忙しいじゃん?あっちも勉強してるからさ」

「リハビリな」

「休日出勤しなきゃ仕事終わんなくなってきちゃった。テスト前だし。学校見学会もあるし」

「お。広報部長、仕事してんの?」

「してるよー。お前体験授業3コマな」

「は?普通2コマだろ?」

「条でポスター作ったじゃん。今年。だから、ビジュアル効果っつーか。理系押したし、数学の受講希望者多いの今年」

「なんだよ。めんどくせー」


解けた。

俺は数学雑誌と健のペンをポンッとテーブルに投げ出して、ソファに背中を預ける。


「なに?お前、今喋りながら問題解いてたの?」

健が雑誌を取り上げて、目を丸くして俺の走り書きを見る。

「お前の頭ん中どーなってんの?」

「見る?」

「見せて見せて」

って健が俺の頭を掴んで自分の顔に近づける。

為されるがままにして俺は笑う。

健が俺の前髪を手で後ろに撫でつける。


「やんなかったの?お前、昨日」


俺はえ?って片眉を上げる。


「固めたまんまじゃん。頭。崩れてっけど」


「ああ…」


シャワーも浴びずにやって、そのままシャワーも浴びずに二人して爆睡しちまったからな…。


俺は数学雑誌をチラッと見る。


「理屈通り考えりゃ…必ず答えに辿り着けんだよ数学は。解無しだとしても、それを証明できる。考えりゃ、わかる」


「…なんか…あったの?」


健が心配そうに俺を見る。優しい眼差し。


けど、こいつも今新城のことでいっぱいいっぱいだしな…。


「べっつにー」

って俺は健から目をそらし、背中を丸めて、膝の上で頰杖をつく。