先生の視線がさっと下から上へあたしの全身を走る。目が合って、先生はすぐに目を伏せる。
あたしも、恥ずかしくて下を向く。コンビニの袋に目がとまる。あたしの視線に気づいて、
「これ」
って、先生が袋を差し出す。
「あ…ありがとうございます…」
先生から袋を受け取って中をのぞく。
先生はポケットに手を入れて、下向いて、
「…じゃ…」
って、上目遣いであたしを見る。
え?
か…帰っちゃうの?話は?
先生が少し困った顔をして、横を向く。
「ゆっくりして…早く治せ。上野の分、仕事たっぷり残しといてやるから」
「え?」
「冗談だよ」
って先生が笑う。
…どうしよう…やっぱり、先生が好き。
騙されたとは思えない。そんな人には見えない。
この人に、ちゃんと、うんと本気で愛されたい。
体が熱くなる。鼓動が早まる。頭がぼーっとしてくる。
先生に…触れてほしい…。
慣れない自分の感情に戸惑いながら、助けを求めるように先生を見る。
見つめ返す先生の目に射抜かれて動けない。
あ。
先生がポケットから右手を出して、あたしの方に伸ばしたかと思うと、あたしの耳の後ろあたりで髪に指を埋めてあたしの頭を引き寄せる。
深くくちづけられる。
片手はドアノブを掴み、もう片方の手にはコンビニの袋を提げたまま、両手が塞がった状態のあたしは、為されるがままで…。
先生の左手があたしの腰からお尻を撫でさするのを、どうすることもできずに…ただ…キスを受けながら…感じてしまう。
唇が離れた隙に、
「…風邪…うつっちゃうから…」
って言うと、
「…ん」
って、先生があたしから離れる。
少し照れて甘く微笑む先生が可愛い…。
それから、照れ隠しのように、キュッと眉間に皺を寄せて、横を向く。
先生に風邪がうつるのは困るけど…これが恋の病なら、うつって欲しい。先生に。