けんちゃん先生がじっとあたしを見つめて…キス、されるかと、思った。
…なわけ、ないよね。
そんな風に期待したり、夢見たり…それが、だんだん辛くなってきたの。先生を好きになればなるほど。
高校生の頃の「好き」とは違う。
あたし、それを自覚しちゃった。
先生は大人だから。大人の男の人だから。誰かと付き合うってことは、大人の付き合いをすることで…。
だけど、あたしには、胸から下の感覚が、ない。
だから、みんながしてるようなことはできない。
あたしは、それで良くても、男の人はそうはいかないだろう。
だから、あたしを好きになってくれる人なんか、いない。
恋は、諦めてる。
諦めてるけど、先生を好きな気持ちは、自分でも、どうしようもない。
こんな体で、先生に愛されるわけがないのに、先生が優しいから…。
「もう…いいよ」
「あ…ごめん」
「先生、謝ってばっかり」
「そうだね。ごめん」
「ほら」
先生の笑顔…好き。ずっと笑ってて欲しい。
やっぱり、諦めなくちゃいけない。
先生のこと、あたしがこんなふうに好きだと知ったら、先生は、あたしの気持ちに答えられないことに、また罪悪感を抱くから。
もう、謝られるのはたくさんだから。
先生の顔を曇らせたくないから。