忘らるる身をば思はず誓ひてし おまけ | 上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

上目遣いのけんちゃん先生 V6カミセン 小説

V6の三宅健と森田剛と岡田准一をイメージしたイケメン教師が、今どきの女子高校生たちと繰り広げる学園ドラマ。ドラマの進行の合間に出てくるけんちゃん先生の古典講義は勉強にもなる?

俺が教室を出ると、後ろのドアから生徒がひとり出て来て、俺の方に駆け寄ってきた。

「けんちゃん先生!」

「ん?なに?質問?」

「あの…今日の授業、すごく、おもしろかったし、わかりやすかったんですけど…」

「うん。ありがと」

「いえ…。あの、先生が言ってたふた通りの解釈、なんですけど」

「うん」

「どっちかじゃないと…ダメですか?」

「ん?なに?別の解釈もできるってこと?」

「そうじゃなくて…あたしも、その時になってみないとわからないですけど…ち、誓われたりしたことないし」

「うん」

彼女は顔を真っ赤にして一生懸命話す。

「でも、もし、そうなったら、やっぱり誓っといて裏切るわけだから、バチ当たれって、ちょっとは思うと思うけど…」

「うん」

「でも…」

ってますます顔を赤らめる。

「でも、好きな人には、やっぱり幸せになって欲しいと思うし…。そう思いながら、自分も元彼のこと、忘れようとするのかなって。…だから、どっちでもないっていうか…」

「どっちでもあるっていうか?」

「…はい…」

「なるほどね」

俺は、ちょっと考える。

「うん。いいね。…すごくいいと思うよ。…そうだね。どっちかひとつに決める必要ないよね。作者は、ふたつの複雑な気持ちを詠んだのかもしれない」

不安げだった彼女の顔がパッと明るくなる。

「きっと君が正解だよ。人の気持ちがひとつの感情に染まることなんて、あんまないもんな。いつも、相反する気持ちの間で揺れ動いてる…。特に、恋をしてるときは…」

彼女が顔を赤らめて、思いつめたような顔で俺を見上げる。

おっと…いけない。

「ありがとう。勉強になった。次の授業でみんなに発表していい?君の意見」

「えっ?…は、はい」

俺は彼女の頭をポンポン、とたたく。

「センスあるよ。…じゃ」

って俺は片手を上げて、彼女に背を向ける。

彼女が、遠巻きに見ていた友達の所へ、「きゃーうれしー♡」ってパタパタとかけていく足音が聞こえた。