「まあ、ちょっとこの歌詠んでみようよ。
…まず、忘らるるのとこだけど、ちょっとここ要注意。普通は下二段動詞なんだけど、ここでは古い活用の仕方で、四段に活用してるのね?
で、るるは?何の助動詞?ここではどういう意味?」
「尊敬?」
「受身ー」
「可能!」
「自発ー?」
「全部言うなよっ。どれか当たるだろっ。恋の歌だよ?受身受身。忘れられるんだよ。忘れられるわが身って意味ね」
「じゃあ、別れの歌なのー?」
「そ。あなたに忘れられるわが身、自分だね…をー、ばは強意の係助詞「は」が濁音化しただけ。自分のことはって強調してんの。」
「なんで強調してるんですかー?」
「後を詠めばわかるよ。思はずは、何とも思わない。自分のことは、どうでもいいってことね。あなたに忘れられて、つまりフラれて、捨てられてー」
「先生、ひどーい」
「どんだけ言うの?」
「いや、別に俺が捨てるわけじゃないだろっ」
「でも、ひどい」
「右近ちゃんかわいそう」
「はいはい。すみません。…でね」
「うわっ流してる」
けんちゃん先生が照れ笑いします。
「自分はフラれて辛いけど、そんなことはどうでもいい、と。
こっからだよ、こっから!
次、誓ひてしからだけど、誓ひてしは、神に誓ったって意味。何を誓うの?恋の初めに誓うことといえばっ?」
「浮気しない!」
「おおっ!近いっ。もう一声!」
「絶対しない!」
「あはは。絶対って、いつまで?」
「ずっと!」
「一生!」
「いいねー。そうだね。一生一緒ってやつだね?あなたを永遠に愛しますって…」
ヒュー♪
「きゃーっ♡」
「もっかい言ってー♡」
「言わないよもうっ!」
「先生、照れてる」「キャハハ。顔赤い」
「可愛い~♡」