優雅で感傷的な日本野球 〔新装新版〕 (河出文庫)


優雅で感傷的な日本野球 〔新装新版〕 (河出文庫)


久々に読書しました。


子供の頃、絶滅した恐竜がどのように地上を闊歩していたのか想像するように、小説内では絶滅してしまった野球を想像し、登場人物たちは独学で野球に近づいていこうとするお話。


別に題材は野球じゃなくてもいいと思うのですが、そのように感じるということは野球を知らない人も読めるように工夫がされているからなのでしょうね。


小説は連作短編という形式を採用しており、各々が独立した短編なのかと思いきや後半で1つに繋がる仕掛けが用意されています。


文学の懐の深さと多様性を感じさせる名作。


岡田(現監督)にポルノ俳優をやらせていいのか、という疑問は残りますが、本人からクレームが来ていないのならそれでいいのかな。


岡田さん、中学生二人と40歳の女子高生相手に性交しまくりなのですが、これはこれで問題にならないのかな。


若い頃これを読んでも書き手の意図が全く理解できなかったと思う。


ただの馬鹿な話、という感想で終わっていたことだと思う。


斯く言う私も、第一回三島由紀夫賞を本作が受賞していなかったら、なんだこれふざけた小説だな、と憤慨していたはず。





城 (新潮文庫)/フランツ カフカ
¥820
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これはまさしくカフカの最高傑作といえるかもしれない。

測量士として招かれた主人公Kですが、文中で一度も測量士としての仕事を与えられない点がユニーク。

彼が測量士として認められるには、直属の上司にあたるクラムと謁見するしかない。

クラムと謁見し、測量士としての仕事を貰わなければならない。

ところがそのクラムが全く姿を現さない。

この世界との唯一の繋がりであるクラムと接触を図ることができず、Kがどんどん孤立を深めていく様子は、おそらく著者であるカフカと現実世界の関係そのものだったのでしょう。


コインロッカー・ベイビーズ (上) (講談社文庫)/村上 龍
¥490
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限りなく透明に~とは世界観が似ているものの、こちらのほうがわかりやすい話になっています。
村上龍さんは文学の役割とは社会が抱える問題を提起することにあると仰っていますが、この作品を読んで得心いたしました。
混沌とした世界ではあるものの、それ自体を面白おかしく描こうとしているわけではないので安心して読めます。
これまで読んだ村上作品の中では一番好きかもしれない。
砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない A Lollypop or A Bullet (角川文庫)/桜庭 一樹
¥500
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猟奇事件を背景にした青春小説とでも言うのでしょうか?
本文で繰り返し言われる「実弾」と「砂糖菓子の弾丸」が印象に残った。
子供が大人になるにはどうしたらいいのか。
兄がひきこもりから立ち直れたのは理解できるかな。
生きることを拒否している甘ったれた人間は、人の死と対峙することで生きる活力を取り戻すことがあるのだと思う。
藻屑と兄は同質でありながら対照的なんですよね。
兄は自分をごまかすことができず、社会から身を引いて「死んだように生きていた」のだと思う。
藻屑は自分をごまかし、社会に身を置いて「死んだように生きていた」のだと思う。
藻屑には兄のように逃げ込む場所が無かったのが悲劇だった。
いやはや、かなりヘビーなテーマ扱ってますよ、この小説。
それなのに、どうしてこんなに爽やかな読後感があるのだろうと不思議に思う。
また桜庭さんの小説を読んでみたいです。
古都 (新潮文庫)/川端 康成
¥420
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素晴らしい小説でした。
今まで読んだ川端作品で一番好きな小説かもしれません。
物語の結末がくどくなくオシャレ。
なんといっても、登場人物全てに愛が満ち溢れているところが良いです。

荒野のおおかみ (新潮文庫)/ヘッセ
¥540
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荒野のおおかみとはアウトサイダーを指している。
この小説を読んで、荒野のおおかみとは自分のことだ、と感じた人は多いのではないでしょうか。
単純に感動する小説だったらわかりやすいのだけど、この小説には考えさせられる部分が沢山ある。
今も昔も人は変わらない、ということなんでしょうね。
物語としては、どうだったのかなあ、と疑問が残った。
終盤の展開は物語性を全く無視したものになっていましたし。
魔王 (講談社文庫)/伊坂 幸太郎
¥650
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今まで読んだ伊坂作品で一番しっくりこない話だったかもしれない。
まだ続編があるみたいなんですよね。
それを読むまではこの話をどう評価するか難しいところ。
いつものように「騙される」ことを期待して読んだのがまずかったかなぁ。
個人的な体験 (新潮文庫 お 9-10)/大江 健三郎
¥500
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いやはや参りました。
他人と想いを共有することのできない「個人的な体験」は誰しも持っていることだと思う。
一人の人間が人生を左右する問題に遇し、退廃的な方向へ逃避しようとするも、最後は自らの「個人的な問題」に立ち向かい、決意を新たにする物語。
戦う意思を定めた鳥と、困難から逃避しようとしていた鳥の対比が美しい。
最後の最後で感動が待っていて驚きました。
そういう小説ではないと思って読書していただけに。
白痴 (下巻) (新潮文庫)/ドストエフスキー
¥860
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長かったですね・・・。
9月中には読み終わると思ってたのですけど、10月の半ばまでかかってしまいました。
ドストエフスキーは主人公のムイシュキン公爵を「美しい人」として描き、トルストイはムイシュキン公爵について「これはダイヤモンドのように素晴らしい人物だ」と絶賛したといいます。
私にはそうは思えませんでした。
想像力が貧困だからかな?
ラストの展開はスピーディでよかったけれど、そこに至るまでが本当に退屈でした。
はっきりいって消化不良をおこしてます。
ネットで世間の方々のレビューを読んで、改めて考え直す必要がある。
改めて思うけど、ドストエフスキーの小説を翻訳するのは本当に大変なんだなぁ・・・。
トルストイ小説をあんなに上手に翻訳した木村さんだから安心して読み始めたのに・・・。