「モヤモヤ」という言葉で自分の機嫌の責任を他人に押し付けるな
「モヤモヤ」。この言葉、最近流行っているのだろうか。Twitterもエッセイ漫画も婚活ブログも、どこもかしこもモヤモヤモヤモヤ…。そしてそれらの「モヤモヤ」はきまって他者に向けられた怒りや不満の感情であり、だいたいが「イラッ」「ムカッ」「はぁ?」で言い換えることができる。「モヤモヤ」は怠慢であり傲慢である。なぜなら自分の感情をはっきりさせること、そしてそれらにどう対処するかという思考や行動を放棄しているから。自分が不快な思いを抱けば、自分以外の人間が気持ちに寄り添ってくれて、自分の機嫌を取ってくれると思っているから。「モヤ〜ン」「モンヤリ」などという謎の活用形を使い始めたらもうおしまいである。「私は悪くない。なんで自分を変えなきゃいけないの?」「悪いのは相手(自分以外の人間)」「自分は善良で常識的な人間であり、そんな自分を不快にさせた相手にこそ非がある」「だけどそれを言い出せない”繊細さん”な私」これが「モヤモヤ」の正体である。そして婚活における「モヤモヤ」は「相手が自分の理想通りに行動してくれなくて腹が立った」「私が何も言わなくても相手はこちらを察して動くべき」という意味に集約される。例えば、婚活デートで相手の男性が自分(女性)の食事代を出してくれなかったことを不満に思ったとする。本音はこうだ。「男なら全額奢るべき。それがマナーでしょ?私は好きでもないあなたのためにわざわざ時間を作って来たんだから、食事代くらい出してよ!」しかしそれをそのまま言葉にすると「自分が食べた分の代金くらい自分で出せ」「相手の男も、奢るほどの価値をあなたに見出せなかっただけ」などと非難されるのが目に見えている。そこで「婚活デートで相手が私の食事代を出してくれなくてモヤモヤした」と言えば、「自分の身の程はわきまえていますよ」というテイを保ちつつ、「婚活デートで奢らない非常識な男」と「それを指摘できない常識的で気弱な私」という、あたかも「加害者と被害者」であるかのような構図にできる。以前「自己肯定感」という言葉が流行ったときに、胡散臭い自称恋愛カウンセラーたちがこぞって謳っていた「あなたが結婚できないのは魅力がないからではなく、自己肯定感が低いから」という、自分以外の何か(誰か)に原因を無理やり見出し、責任を丸投げする手法と同じだ。「モヤモヤ」は便利な言葉であり、逃げである。怒り、悲しみ、焦り、苦しみ、失望、羨望、嫉妬、無価値感。「モヤモヤ」していれば、自分のなかで渦巻く黒い気持ち、そして現在置かれた望ましくない自分の立場を直視せずにいられる。そのため状況を変化させる行動もしなくていいし、自分を不快にさせた相手こそが悪いと思っていられる。自分を変えることより、自分以外の人やもののせいにするほうがずっとずっとラクなのだ。「なんで私の機嫌をとってくれないの?」「モヤモヤしてる私、他人にこんなこと言われて反論できなかったかわいそうな私」傲慢で自省心のない他責思考の察してちゃん。それが「モヤモヤ」しているあなたの正体だ。