アポロン戦が終わり、遂に訪れた平和な一時―――。
終わりを告げる、ハジマリの物語。
一時の幸福を、ライナ達は噛み締める。
続く物語に向けて――――。
※今回と次回は、かなり短めになる予定ですwwご了承をww
幻想物語
第7章 第17話
-安息の時-
上がる息と、高ぶる気持ちを抑え、ライナ達は皆、勝利の余韻を噛み締めていた。
先程までのもやもやは、いつの間にか笑みへと昇華している。
ただただ、嬉しいとしか感じ取れない。
「俺たちの正義って・・・何なんだろうな・・・」
天を仰ぎ、物思いにふけるライナの後ろから、バレットは勢いよく飛び付いた。
「なーに難しい顔してんだよ。お前はバカでいろ、バカで」
全身傷だらけで絡んでくるバレットに、ライナは苦笑いをしながら言った。
「俺がバカだったら誰がお前の抑止力になるんだよ」
肩を組み合い、クスクスと笑う2人の姿は、アスカ達から見ても温かな光景だった。
アスカはイディンと流星にニッコリと笑みを向けた。
「ほら2人とも、行くよ?」
2人の返答も聞かぬまま、アスカはスキップをしながらライナの元へ駆け寄って行った。
ライナ、アスカ、イディン、バレット、ガイア、流星。
戦いを終えた6人は、並び、互いに笑い合っていた。
「ほらガイア、さっさと開けよ」
バレットが顎でクイと前を指す。
クスッと笑みを浮かべたガイアが、懐に手を入れた。
「分かってるよ。さぁ、行くよ」
ガイアが懐から取り出したスイッチを押した。
それからやや時間があって、6人の前の空間がぐにゃりと歪み、地球へと繋がる、時空の歪みが現れた。
6人を手招きするかのように、黒い空間が、妖しく広がっていた。
黒い空とは違う、別の意味での、“黒”が。
「んじゃま、胸張って帰るか!!」
「「「「「おうっ!!!」」」」」
6人は、同時に足を踏み出した。
-地球 ファントム国立公園-
ライナの姿が歪んだ空間から出てきた瞬間、耳を劈くほどの歓声が、地を揺らした。
そのあまりに声量に、一瞬面食らったライナだが、すぐに状況を把握し、苦笑いを浮かべていた。
「・・・すっげーな・・・・・・。何だよ、この人の数」
「当然、僕達を見に来た人たちだろうね」
「当たり前でしょ、ライナ君?」
「遂にバカになったか」
「ボク達頑張ったもんね!」
「過去の英雄にならないようにしないと、ですね」
ガイア達は、冷静な声で、ライナの驚きを笑いながら、ライナにやや遅れて、姿を現した。
皆、喜びと満足に満ちた表情をしていた。
そしてそれは、それ以外の群衆も、平等に同じだった。
ありがとう、それ以外の言葉が、群衆からは出てこなかった。
「ありがとう、本当に」
ライナの後ろ側から、声が聞こえた。
誰かと思い、振り返ると、そこには、笑みで一杯の、イメルダ、ヴォルス、パールデルが立っていた。
「全く・・・。英雄になっちまったな、ライナ第一部隊長」
「英雄なんて言い方、やめて下さい・・・。俺は、そんなつもりでやったんじゃ・・・」
申し訳なさそうな低姿勢で頭を掻くライナに、パールデルは声をかけた。
「大切な人を守るため、でしょ?」
「えっ・・・?」
「世界なんて大きなものより、大切な人を守ろうと戦ったんでしょ?だったら、それで充分じゃない。ドンと胸張って、しっかり前向きなさい❤」
らしくない、と言ってしまえばパールデルに失礼なのだろうが、それでも、そのセリフはパールデルらしくないものだった。
思わず、微笑が浮かぶ。
「はいっ!分かってます!!」
ぱあっと明るい表情で、ライナは駆け出した。
行く先は一つ、レナの下だ。
心配をかけ続けたレナを、早く安心させてやりたい。
そういう気持ちで、ライナの中は一杯だった。
このために集まった、リンジャーやハルドのことなど、気付きもせず、群衆の中を、一心不乱に駆けた。
「ガイアッ!!後のこと、頼んだぜっ!!」
群衆の中、ライナはガイアに向かって声を飛ばした。
背を向けたままだったが、ガイアには確かに、その言葉は届いていた。
「あぁ!早く行ってきなよ!!この色男!!」
その言葉を受け、ライナの足取りは一層速く、軽くなった。
そして、そのガイアの声で、群衆はほぼ同時に何かを察知し、ライナのため、すっと道を開けた。
群衆の突然の団結に、ライナは疑問を顔中に浮かべたが、すぐにそれを呑みこんだ。
ありがとう、みんな。
声には出さなかったが、その口は、確かにそう言っていた。
ライナは、止まらない。
止まったら、倒れてしまいそうだったから。
ただ、走り続けた。
青空の下、大切な人の下へ。
迷うことなく、まっすぐと。
これが、勝利だ。
これが、喜びだ。
これが、安息の時だ。
今はただ、その時を、噛み締めていけばいい。
たとえこの先の物語が、暗く、沈んだものであったとしても。
今は、今だけは。
走れ。
走れ!!
走れ!!!
第1部 完!!!!
うおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉおぉぉぉおぉぉ!!!!!!!!!!
終わったぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!!!
ラスト、エピローグだけ!!!!
この話とエピローグは、恐らくですが2話同時アップになります!!
そこんとこ、よろしくです!!!!!