【幻想物語 第7章 第7話】 | 毎日きびきび

毎日きびきび

遂に大学生。
気を引き締めていきたいですね。

これまで出会えた全ての人に感謝を。
これから出会っていくであろう全ての人に感謝を。

最終決戦!!


いよいよ第一部完結バトル開始です!!



第一神官タナトス!!太陽神アポロン!!

この二人は連戦です!!


休みません!!




頑張ります!!





幻想物語


第7章 第7


Symble of DEATH



―地上 ファントム中央地区 ファントム国立公園―



ライナ達の心は、ひどく落ち着いてた。

怯えや、恐れや、弱気は、とうの昔に克服した。


今、ライナ達の心の中心にあるのは、決意。


並々ならぬ、決意。

人間たちを救うという、覚悟。


アポロンを倒すという、誓い。



ライナ、アスカ、イディン、バレット、マリア、ガイア、流星。


同じ決意と覚悟と誓いを背負った7人が、並び立つ。



「皆、準備はいいよな?」




「おう!いつでもいいぜ!!」


「うん・・・・。いこう・・!!」


「勝つんだよね、ボク達!!」


「その通りさ、イディン君!!」


「もちろんです。いつでも」


「勝ちましょう!!皆で!!」


6人の固まった決意を目視することができ、ライナはホッと安堵の息を漏らした。



「皆さん、よろしいですか?」

ライナ達の後ろから、すっかり聞き慣れた声が聞こえてきた。



その声につられ、後ろを振り返る。


そこには、イメルダ総司令を含めた、大勢の人達が詰めかけていた。



見知った顔が多数見られる。


だが、その中にライナの両親――ハリスとマリーナ、加えてレナの姿はなかった。



『こなくていい』


ライナは、そう告げていた。


これが最後ではないのだ。


勝って、帰る。

勝てば、また会えるのだ。



だからこそ、ライナの心はひどく落ち着いていたのかもしれない。



「では、そろそろ空間投影装置、空間移動装置を起動します。ライナさん、“作戦”は、理解できてますね?」



公園の芝の上に設置されたPCの画面を見ていたイメルダが、そう告げた。




「あぁ、分かってる」



カタッ。

キーを叩く音がした。


それとほぼ同時に、高周波がどこからともなく発せられる。



コオオオオアアアァァァァ。



ライナの目の前の空間が、歪み始めた。



「あっ、ライナさん・・・」


一歩を踏み出そうとしたライナを、イメルダが制止する。


いきなり出鼻をくじかれ、ライナは一瞬ふてくされた顔になるが、すぐに平静さを取り戻した。


「何すか・・・・?」


「これを・・・・」


そう言ったイメルダの手には、小さな赤い布製の巾着が握られていた。


「これは・・?」


「パールデル医療機関総司令からの贈り物だそうです。常に肌身離さず身に着けておくようにとのことです」



「あっ、はい・・・」


そこには、大きく『必勝!』と書いてあった。

突然のプレゼント――にしてはやけに可愛げに欠けるが、女性からの贈り物だ――を受け取り、右のポケットに乱雑に押し込んだ。


そうして改めて、ライナは歪んだ空間の先を見つめる。


「じゃあ、行ってくる・・・!!」


そう言って、ライナ達7人は、一歩を踏み出した。



空間の歪みの向こうに、7人の姿が消える・・・・・。





-地球軌道上 約36万㎞-



地上にあったものと同じ、空間の歪みが、ここにも現れた。


そしてそこから、ライナ達7人が姿を現す。


当然、地上とは違い、足元を支えるものは何もなく、7人はいきなり無重力の空間に投げ出されることになった。


「ここは・・・?」


早くもこの環境に順応した様子のバレットが、辺りをキョロキョロと見渡す。


背後には地球、前方には月。


どうやら、その間の位置に飛ばされたようだ。


「大体、地上から36万㎞くらい、だな」


手元の電子パネルを見ていたライナが、バレットの問いに返した。


「えっ、アポロン達って、月にいるんじゃないの?何で、こんな半端な位置に?」

いきなりよく分からない箇所へと飛ばされたのだ。

アスカがこう言うのも無理はない。


それに対し、ガイアが至極落ち着いた声で返す。

「多分、空間転移装置の転移限界距離が、36万㎞前後だったんだろうね。ロケットでも2日から3日かかるって考えたら、一瞬でここまでこれたんだ、すごくラッキーだと思うよ」


そう言って、軽く微笑んだ。



だが・・・・

「ら、ライナさん・・・・!!」

流星の緊迫した声が、ライナの、その場にいた全員の鼓膜を揺らした。


そして瞬時に、何が起こっているのか、全員が理解した。


震える流星の視線の先には、一人の人影が立って、いや、浮いていたのだ。



「・・・・お前は?」

乾いた唇を舐め、ライナはその人影に向かって声を上げる。



「・・・・・・・・」


だが、その人物は答えようとしない。

それはおろか、身動き一つとろうとしない。


「分かってるぜ。お前、タナトスだろ?第1神官、タナトス。そうだろ?」


バレットが語調を強める。


そんなバレットの声色とは全く違った、冷たい声で、そいつは答えた。


「・・・そうだ。俺が、死淵神、第1神官タナトスだ」



ライナ達は、タナトスの全身を改めて見つめる。


太陽の光を全て吸収せんばかりの、漆黒。

装飾一つ無く、柄もない。

ただただ、漆黒に満ちた、黒衣。


彼、タナトスは、フードを目深に被り、その顔を隠している。



「顔、見せたら?」


やや挑発気味に、マリアが唇の端を吊り上げる。


その言葉に触発されてか、タナトスはゆっくりとフードを脱いだ。



フードの下に隠されていたのは、まごうことなき、人間の顔だ。

整い、見ようによっては美形に見える。

片頬に大きな刺青があり、顎から額にまで伸びている。


だが、それ以上に目を引くのが、その眼だ。

ピアスや、装飾があるわけではない。

しかし、それ以上にその眼つきは、見る者を引き込ませる力を持っていた。

灰色の、冷たい、全てを凍らせてしまうような・・・・・そんな眼だ・・・・。



「マリア・・・・テメェが“そっち”に味方するなんてな・・・・。アポロン様はお怒りだぜ?」


「それで?悪いけど、アタシは今はアナタ達の敵。道を違える者よ」


「だろうな・・・!!だからこそ、俺はテメェはぶっ殺す」


冷酷な、抑揚のない声でそう言い、マリアをギロリと睨む。


直後、息を大きく吸った。



皮肉にも、ライナはその行動の真意が、直ぐに理解できた。

故に、他の6人よりも先に、身構えることができたのだ。



「天の憎悪と天の絶望。神の殺意と神の教唆。地の憤怒と地の怒号。血の代償と、死の狼狽。全てのカケラ、一つとなりて、全ての敵を無に還せ。躯とともに育ちし御魂、死の息吹にて灰燼と為せ。全てを捕えし時のチカラ、遥かな明日へと突き進む。罪を知らぬ夢想の剣、罰を知らぬ幻想の盾。全てを砕き、大海へと沈め!!」



そう・・・・。

“アレ”だ・・・・。

ライナが、最も恐れ、警戒していた、最凶の力。

宝剣・・・・。



それが・・・・今・・・ライナの目の前で・・・・現実となる・・・・。




  リリール・オブ・タナトス

「堕骨宝剣・・・」



すっと差し出した掌で、闇が形を成していく。


虚空から現れる、というよりは、この世がそれを産み落としたようだ。


完全な形となったそれを、タナトスは肩に担ぐ。


それは、命を刈り取る、大鎌。


死神が持つ、冷酷な武器。


全てを引き裂く、災厄の元凶。




「それが・・・・お前の・・・・」

ライナは、敢えて語尾を濁らせた。

言わずとも、その場にいた者全員(もちろん、タナトスも含む)が理解していたからだ。



それを知った上で、タナトスは口を開いた。


「そうだ・・・・。これが、俺の宝剣。堕骨宝剣(リリール・オブ・タナトス)だ」


妖しく黒光りするそれは、間違いなく宝剣だ。

今まで見たどの宝剣よりも、邪悪で、闇に満ちている。


それが、何を意味するかはライナの知り得る範疇ではないが、恐らく、宝剣というのは、発動者の精神状態を色濃く反映させるのであろう。

つまり、本人にとって最も扱いやすい能力となるのではないのだろうか。




「相変わらず、気持ち悪いくらい黒々しいわね」


フッと笑みを浮かべ、皮肉を言う。


直後、マリアも大きく息を吸った。





「天よりの宝札。神よりの宝玉。地よりの恵。全ての花弁、一つになりて、全ての形の元となれ。躯に宿りし命の原石、狂気と殺気に呑まれて輝け。全てを超えし聖母のチカラよ。今、群青色の血雨となりて、光を纏いし道となれ」




本来ならば、詠唱など必要ないのだろうが、マリアはタナトスに対抗意識を燃やしてか、敢えて詠唱を唱えた。

そしてその様子を、タナトスはただ見ていた。手を出すことはせず・・・。



   ティブラ・オブ・マリア

「創命宝剣!」



蒼色の光を放つ宝石が、杖の先にはまっている。

すらりとした、スリムな姿態。


タナトスの堕骨宝剣(リリール・オブ・タナトス)の大鎌とは違い、こちらの創命宝剣(ティブラ・オブ・マリア)は柔らかな雰囲気だ。


いや、本来なら創命宝剣(ティブラ・オブ・マリア)も他を圧巻させるほど冷たいはずだが、それを上回るほど堕骨宝剣(リリール・オブ・タナトス)は黒く、邪悪で、冷たい存在だったのだろう。



「随分久しぶりかもね。アナタと戦うなんて」



「結果は決まってる。俺が勝って、それで終わりだ」



「ならその勝負、俺達も混ぜろよ」

微笑を浮かべたバレットが、フンと鼻を鳴らす。


その手には、既に瀑焱宝剣(フィアンジャ・オブ・グラン)がしっかりと握られている。



「そうそう。アタシ達もそのつもりでここに来たんだしね」


アスカが、にこりと微笑む。


同時に、魔法名を唱えた。



 ティエンテ・オブ・ク―エリア

「麗音宝剣」



瞬時に、アスカの手の中にフルートが現れる。


優しく、しかし力強く、それを握りしめる―――。




「いいなぁ、2人とも。自分の宝剣があってさー」


ふてくされたように言うイディンだが、その顔には純粋な笑みしか見てとれない。

心底、この展開を楽しんでいるのだ。

 


   レティリッド・イアン

「鋼雷逆天」



宝剣の代わりにイディンが発動した魔法は、鎧だった。

しかしそれは、全身を覆うようなモノではなく、腕と、脚、その2カ所を特化して護るモノだ。

いや、護る、というよりも、相手を壊すために存在しているのだろう。

妖しく黒光りするそれは、バチバチと火花を散らしている。




「やっと、僕も神官と戦えるってことか!」

先の3人と同じく、溌剌とした表情で、喜びを表に出す流星。


皆と同じく、魔法を唱える。


    ダブラス・グリンド

「双槍地月!」


次の瞬間、流星の手元が輝くと同時に、そこに槍が出現した。

その槍の形状は、槍と云うよりも瀑焱宝剣(フィアンジャ・オブ・グラン)の両手剣に近い。

持ち手を中心に上下に伸びた片刃の刃。

その持ち手の中心には、月をあしらった彫刻が刻まれ、これからの目標である、『天であり神であるアポロンが住まう月を討つ』を色濃く表している。





「まったく・・・・皆、テンション上げ過ぎ・・・」

落ち着いた声で、至極当然のように皆の空気を乱すのは、無論のことガイアの仕業。


やれやれといった顔でフルフルと首を振る。


「少しは落ち着かなきゃね♪」

そう言うガイアだが、顔には確かに笑みが浮かんでいる。

戦いを楽しむ、笑みが―――。



  イヴィル・レイドラ

「邪魂黒双」


タナトスのときと同じく―といっても、邪悪さでは遥かにタナトスが勝るが―黒い瘴気がガイアの両手に収束されていく・・・。


直後、その瘴気は剣となった。

長さは、刃渡り70㎝くらいだろうか。

それが、1対。つまり、2本。


ヒュンヒュンと音を立てて指先で邪魂黒双(イヴィル・レイドラ)を弄ぶ。

当然、刃は剥き出しだ。



「ちょっ、ガイア。あぶねーからそれやめろッ」



「しょーがないじゃん♪僕だって神官と戦うのは初めてだからさ。柄にもなく興奮しちゃって」

その顔に、恐怖は見られない。

言葉に偽りなし。本当に楽しむつもりだ――。




「なら、俺はいない方がいいか?」

嫌味っぽく、ガイアに訊ねる。

無論、本心からこんなことを言いはしない。



当然、皮肉で言ったに決まっている。

皮肉に決まって・・・・・。



「うん!そうだね!!ライナ君はさっさとアポロンのとこにいってきなよ!」



語調を多少強め、ライナが笑みを浮かべる。


ライナ自身、本心から危ないとは思っていない。

ガイアがそんな初歩的な失敗をするわけがないからだ。







「マジに、言ってんのか?」


「あぁ、もちろん。第一、僕達がコイツの相手をしている間に、アポロンが地球を攻めたら、それこそおじゃんだよ?」
もっともらしいことを言うガイアだが、その表情と喋り方から推測するに、ライナを早くこの場所から追い払いたいのだ。

自分だけが、この戦いを楽しむために―――。



「なら、行くぜ?」

冷や汗がタラリと垂れるのを感じたが、それを拭うひまなどない。

ただただガイアの目を見つめ、震える声を絞り出す。



「あぁ、行ってくれ。ただし、僕達が行くまでの間、死なないでくれ・・・・・!!」



このセリフ、いつもならばただの皮肉として流していたライナだが、今回は違う。

本気で言っているのだ。

それほどまでに、アポロンを恐れているのだ、ガイアは。




「分かった・・・!!」



   サテライト・ウイング

「速天ノ剛翼!」



蒼白色の翼が2対、つまり4枚、ライナの背から生え出る。


「それは・・・・!!」

驚嘆の声に満ちるガイア。


それに対し、微笑を浮かべるライナ。


言葉を交わさずとも、2人の間では会話が成立していた。



「時速4万㎞で飛行可能の、天翼魔法(ウイングシリーズ)最高クラスの魔法さ。30分でアポロンのところに行ける。んじゃ、行ってくる!!」


それだけ言い残すと、ライナの姿は一瞬で目視不可能になった。


その直ぐ後に、衝撃波が風となってガイアの髪を揺らした。



「了解・・・・!!」


ライナの飛び去ったであろう方向を見つめ、すぐに視線をタナトスに戻した。


「待たせたね、タナトス。さぁ、勝負といこうか!!」




   ブロイゼ・アステロイズ

「黒骸ノ裂翼!!」


漆黒の、闇の、悪意に満ちた翼が、2枚、広がる――。


タナトスは、この上なく快楽に満ち溢れた表情をしている。




「上等!!すぐに塵にしてやるから、そのつもりでいろ!!」


その声で、ガイア以外の5人―アスカ、イディン、バレット、流星、マリア―も警戒心を強くする。


         シャイレッドゥ・ウイング

「「「「「「光天破昂!!!」」」」」」






6つの声が一つに重なり、直後24枚の羽根が宙に舞う―――。


―――茶褐色の、血の色の、決意の色の、翼。




「気をつけて・・・・。アイツの能力は、神官の中でも随一よ・・・・!!」


「んなこと、言われなくても分かってる!!」


バレットが、強気な声を上げる。




「じゃあ皆、行くよ!!」




六勇士、飛ぶ。


六戦士、舞う。


死神、這う。


死神、笑う。


両雄、交わる―――。



運命を賭した第4大戦――開戦・・・・!!





第7章   第7話   完




長かった・・・!!


前回の更新から大分時間が経ってしまった・・・・・(ノ◇≦。)



さぁ、今年中に第1部を完結させることができるのでしょうか?


第2部に入ってしまえばあとは早い気がします・・・・・!!


とりま、漫画原作と同時進行で、頑張ります♪



やっぱ、しばらく休むと文才って落ちますね・・・・



まっ、元からないんですけど・・・・o(TωT )





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