チカラ
昔から、人はそれを欲してきた。
暴力的な強さ以外にも、様々なチカラはある。
権力
知力
学力
運動力
記憶力
演技力
『力』という漢字が付属する単語だけでも、ごまんとある。
ディーガが象徴するのは、全てを壊し、全てを消し、全てを無に還す、チカラ。
それに対抗するバレットは、自らの体を顧みず、剣を振るう。
果たして、勝つのは・・・・・。
幻想物語
第6章 第11話
Laughter-2つの、笑み。-
バレットが『剣』を振るい、ディーガにたたみかける。
ディーガはそれに応戦する形で、『剣』を振るう。
険しい表情で一点の揺らぎもなく『剣』を振るうバレットと、型に収まらない独特の構えでそれを受け流すディーガ。
そのディーガの顔に浮かぶのは、ニヤニヤとした厭らしい笑みではなく、キラキラとした、それこそ少年のような屈託のない笑みだ。
「さっきからニヤニヤ笑いやがって!!何がそんなに面白いってんだ!!」
ガリガリと嫌な音を立てて瀑焱宝剣(フィアンジャ・オブ・グラン)と壊力宝剣(ガドル・オブ・ディーガ)が擦れる。
ディーガを押し退ける形で前に出たバレットが、剣越しに顔を近づけて怒鳴る。
バレットより遥かに背の高いディーガが、息がかかるほどの距離までぐいと顔を近づけ、高らかに怒声を上げた。
「テメェと戦えることがだよ、人間!!!!」
押し込まれた瀑焱宝剣(フィアンジャ・オブ・グラン)を渾身の力で押し返し、壊力宝剣(ガドル・オブ・ディーガ)を天高く掲げた。
「テメェも、戦いにエクスタシーってのを感じねェのか!!!」
ヒュン。
一瞬の風切り音の後、激しい殴打音が辺りに飛び散る。
ゴッ。
だがそれは、バレットの体にヒットしたものではなく、バレットが構えた瀑焱宝剣(フィアンジャ・オブ・グラン)の刀身にめり込んだ音だった。
バキバキバキ。
凄まじい音を立てて、瀑焱宝剣(フィアンジャ・オブ・グラン)の刀身にヒビが広がる。
だが、それほどのダメージを浴びても、瀑焱宝剣(フィアンジャ・オブ・グラン)が砕けることはなかった。
ただ、そのままの状態でもう一撃でもその身に喰らおうものなら、問答無用で砕かれてしまう。
バレットはそれをとっくに理解し、柄を中心に上下に伸びた刀身を上下逆にし、メインで攻撃する刃を逆にする。
「悪ぃけど、んなもん感じねぇよ!!!」
再び地を蹴り、ディーガに向かって飛び出していった。
「だったらなんで、テメェは笑ってんだ!!」
「えっ・・・・・!?」
ディーガの思いもよらないセリフに、バレットは立ち止まった。
自らの頬に手を当て、そして、驚いた。
本人は意識していないにも関わらず、頬の筋肉は『笑え』という指示を出していたようだ。
苦笑いや作り笑い、愛想笑いなどではなく、自然の、笑み。
戦いの中で生まれるはずのない、自分には全く無縁だと思っていた、笑み。
「やっぱりテメェは、俺と同じ世界の生き物だってことだ!!!」
同類がいたことへの喜びか、はたまた熾烈を極める戦いへの陶酔か、はっきりはしないが、ディーガは明らかに楽しそうだ。
プレゼントをもらった子供のように、無邪気で、純粋で、綺麗で、屈託のない、笑みを浮かべる。
「ふざ・・・・けんな!!!俺とテメェを、同じ次元で括るんじゃねぇよ!!!!」
瀑焱宝剣(フィアンジャ・オブ・グラン)を持つ手に力が入る。
そして再び、地を蹴った・・・・・・・・。
それから実に2時間、バレットとディーガは戦い続けた。
その間、バレットとディーガの集中力は落ちることなく、むしろ研ぎ澄まされていった。
疲労で倒れることも、暑さで脱水症状を起こすこともなく、ただただ己の剣を振るう。
そしてその間、二人は、常に笑っていた・・・・・・。
――もっと、もっと、もっと、戦わせろ!!!!
「はぁ・・・・・・・はぁ・・・・・・・」
立っているだけでやっとのはずが、尚も剣を振るう。
疲労でふらつく足に鞭打ち、呼吸を整える。
体は既に限界だ。
骨が軋み、血が噴出し、肉が震える。
そしてそれは、バレットと相対するディーガも、寸分違わず同じだった。
喧嘩。
二人の死闘を表現するのに、これほどぴったりと当てはまる言葉はそうそうない。
殺し合いでなく、死闘でもなく、勝負ですらなく、『喧嘩』。
剣で斬りかかり、防がれれば殴り、蹴る。
それすら防がれれば、頭突きすら容易に使う。
怒声と歓喜の声を上げ、笑みを浮かべて、喧嘩した。
「うおおおおおぉぉぉぉぉぉ!!!!!!!」
一体幾度、その剣を交えただろう。
既にボロボロで、折れる寸前の瀑焱宝剣(フィアンジャ・オブ・グラン)と壊力宝剣(ガドル・オブ・ディーガ)。
いつ折れても、誰も不思議がらないだろう。
理性で否定しても、本能が戦いを求め、疼いている。
凄まじい轟音と火花を辺りに撒き散らし、瀑焱宝剣(フィアンジャ・オブ・グラン)と壊力宝剣(ガドル・オブ・ディーガ)がぶつかる。
ギャリギャリと嫌な音を立て、両手剣と大槌がぶつかる。
剣撃と打撃。
相反する二つの存在が、一つの共通点で結びつく。
「お前に・・・・・お前にだけは、負けるわけにはいかねェんだよ!!!!!」
バレットが叫ぶと同時に、瀑焱宝剣(フィアンジャ・オブ・グラン)の刀身を紅蓮の炎で覆い尽くされた。
ディーガの顔に肉薄するように、瀑焱宝剣(フィアンジャ・オブ・グラン)を押しこむ。
「おもしれぇ!!!パワー勝負で、俺に勝てると思うなよ!!」
バキッ。
辺りに、異様な音が響き、消えた。
その音の出所を探り、耳を澄ませるが、聞こえたのは先ほどの一回だけで、それ以降、その音は聞こえなかった。
「あああああらぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」
ディーガも、バレットに負けんばかりの声で怒鳴る。
同時に、どす黒い魔力(ディーガ)が壊力宝剣(ガドル・オブ・ディーガ)の躯を覆う。
同時に、ディーガの二の腕の筋肉がより激しく躍動する。
まるで別の生き物のように蠢く筋肉は、おぞましささえ感じさせる。
足場の岩石がバキバキと音を立てて砕けていく。
それでも、二人の身体が壊れることはない。
歯を、それこそ砕けるのではないかと思うほどの力で喰いしばり、目の前にいる相手に全腕力と全体重をかける。
二人の雄叫びが、一つに重なる。
「うらあああああおあおおおおおあおあおあおおおおおおおおあああおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」
永遠に続くかと思われた両雄の激突は、誰しもが思いもよらない形で、突如終結を迎えることになる。
しかし、どちらの体も壊れてはいない。
壊れたのは、壊力宝剣(ガドル・オブ・ディーガ)そのもの。
大槌の躯全体にヒビが広がり、バキッと硬質な音を立てて砕け散った。
「なっ・・・・・・!!!」
バレットは前傾姿勢のまま、ディーガの懐へと飛び込んだ。
斬りつける直前、バレットはディーガにしか聞こえない声で、こう言った。
「ディーガ、俺の・・・・・・勝ちだ」
ドッ。
胸の中心に突如奔る激痛に、ディーガは顔を歪め、ゆっくりと痛む箇所に目線をやる。
深々と刺さった瀑焱宝剣(フィアンジャ・オブ・グラン)は、ディーガの背中から飛び出し、そちらからもドクドクと血が溢れ出す。
「な・・・・・めるな・・・・・・!!!!!!」
飛びかけた意識を気合で押し戻し、躯を失った壊力宝剣(ガドル・オブ・ディーガ)の持ち手をバレット目がけて振り下ろす。
「俺は・・・・・・・負け・・・・・ない・・・・・!!!!」
だが、ディーガの最期の攻撃も、バレットに届くことはなかった。
「させねぇよ」
冷酷そうにそう告げ、突き刺した剣を左方向へと滑らせた。
肉と、右肺と、ディーガの全てを切り裂いて、鮮血に染まった瀑焱宝剣(フィアンジャ・オブ・グラン)が再び太陽の日の下にその姿を晒した。
ディーガは、呻き声一つ上げずに、後方へと倒れた。
第2大戦 勝利
第6章 第11話 完
1ヶ月!!!!
更新までそれだけの日数がかかってしまいました・・・・・・orz
まぁ、高校生活が忙しいから、と言い訳をさせて下さいww
学祭も先日終了し、昨日、高校で初めての模試を受け(未だに自己採点はしてませんがww)、やっと一段落、的な感じです。
ですが、すぐあとに夏休みが待っています・・・・・
嬉しいんですが、部活の合宿があったり、宿題があったり、何かと大変です・・・・・・
あっ、以前質問があって、答えられていない質問があったんで、この場を借りて答えたいと思います!!
「式神さんって文系ですか、理系ですか?」
って聞かれました
えっとですね、「小説書いてるから文系」!!と言いたんですが、将来建築関係の仕事に就きたいと思っているので、行くとしたら理系ですっ☆★
っさて!!!
やっと対ディーガ戦が終わりました!!!
あと3人!!
マリア、タナトス、アポロン!!!
第1部にも終わりが見えてきました!!!!
あっ、以前書いた情報を訂正させてください(w_-;
第3部、【七覇編】と言いましたが、それは前半だけの話です。
後半は、【再臨編】がスタートする形になります!
とりま、そこに辿り着くのが一体いつになるのやら・・・・・・o(TωT )
「人を殴ったり、批判したりする人は、自分が同じことをされる覚悟ができてなければならない」
では、あでゅー(・・。)ゞ