前略 X様

春分とはいえ大連にしては過剰に暖かい日差しが降り注ぐ。
絶好のゴルフ日和だが、僕は工場が稼動していなくても仕事しに出て来る。
貧乏暇無しになるのは、作るものが無いのに仕事が増える不思議の為。
日本の本社は日本の組織らしく議論が大事で、その議論の為の資料は現場にいる我々が作っているのである。

大蔵マフィアの陰謀か、中川大臣のおかげで神風が吹いた為替市場もモラトリアムが過ぎて再び円高に振れ出す。
結局根本的な改革を何もしていないから悲観的にズルズルと状況が悪化するだけ。
何が悪かったのか判明しているのならすぐに改善しろよ。
責任を取りたくない奴等に責任を取らせられない権力が居座り続けたらいかんだろ。

日本ではネット世論と非ネット世論が分裂しているので、日本人の多くが実際にどう思っているのか判り難いんだが、中国や韓国に切れ過ぎるとあまり良い事が起こらんよ。
先の負け戦も、元はと言えば隣国のだらしなさや無法さに日本人がブチ切れたことが発端とも言える。
中国に来て十数年になんなんとする僕にして今でもブチ切れそうになることが多いので気持ちは解るが、本当にブチ切れて先に手を出したら負けだ。
まず普通の中国人は他人の政治的理屈を事実と因果関係から論理的に理解してあげるという思い遣りに欠けているのだから、よほどこちらが戦略的かつ粘り強くなければ勝てないのだ。

そして韓国には、WBCを見ても判るようにもう力づくでは勝てないのだから、日本人は気持ちを強く持って正々堂々スキルを磨くしかない。
ところが日本は「ゆとり教育」のおかげで若者がダメになっているそうだな。
先日読んだ新聞記事に、日本の名門高校にも中国人が来ていて、そこから東大京大に合格しているということが書いてあって驚いた。
しかしもっと驚いたのは、その記事に対する僕の周囲の中国人の反応だった。

僕の周囲の中国人たちは、別に金持ちでも何でもない、タダのサラリーマンであって、子女にエリート教育を授けているわけでもないという人が多いが、それでもその中の一人がこう言い放ったのには耳を疑った。
「最近の日本人の子供は勉強しないから、日本の名門校なら欧米に比べて楽に入れる」
ショックで暫く言葉が出なかった。
日本の政治、日本の教育、日本の家庭、日本の子供というのは、戦う前から中国に敗れている。

この分では、日本の主要な組織が中国人によって乗っ取られてしまう日も、そう遠くなかろう。
最大の国賊、売国奴は「ゆとり教育」を推進し、外国人を日本を動かす主要なポストにつけてしまえるよう筋道を付けつつある者達であろう。
そういう獅子身中の虫を退治できない日本のシステムというのは脆弱過ぎて話しにならぬ。
しかしそういうシステムの脆弱さを促進し、支えて来たのが、やはりそういう獅子身中の虫たちであるという事を思えば、現在の日本の情けない姿や、将来の日本の見たくない状況というのは、或る意味彼らのユートピアで、彼らの思う壺なのであろう。

どうしてこうなってしまったのか、と思うにつけても残念なのは、日本の左翼学生運動が国際共産主義の理念で隣国のナショナリズムという感情との連携を図ろうとしたことである。
だいたい、借りてきた理念と他人の感情を結び付けようとするという事自体が危なっかしいのであるが、安保世代の日本の学生はマルクスや漫画を読んでも韓非子やマキャベリを読んでいなかったようなので、政治に人間個人の道徳倫理を直結させることの危うさを理解できていなかったのであろう。
思えば、僕の父親もそうであったし、僕を教えた教師達もそうであった。
自分が、自分に教えを垂れた頃の彼らの年齢になってみて、初めて判る彼らの愚鈍さ、勉強不足、そして知的不誠実さ。

だから僕は学校の教師はもちろん、学者研究者という肩書きの連中にも滅多な事では心から敬意を払わない。
本物かどうかは、少し話してみれば判るので、本物だと判った学者研究者に対しては即座に心から敬意を払う。
そういうわけで、それを知らずに僕のいる会社を訪ねて来る経営学者やその研究者の方々は可哀想である。
相手にされないだけならまだしも、侮辱されたと感じた人もこれまでいたのではないか。

しかしそれは仕方のないことだ。
学者研究者を名乗るくせに、勉強が足りないから悪いのだ。
しかしそうすると、「ゆとり」世代から出て来る日本を代表する知性という者は、いったいどのような姿で出て来るのであろう。
いや、それよりも、その前に、彼らをそのようにしてしまった我々の政治的失策をどのようにしてリカバーすれば良いのだろうか。

貧乏は辛いし、社会に自分の存在意義を認めてもらえなくなることはもっと辛い。
でも世の中はまだ未来に向かって進んでいるのだから、現在の自分の苦境を何とかしようとするだけでは大人として無責任ではないか。
僕はもう、自分自身の遺伝子を残すという意味での子供ができることはどうやら望めそうも無い。
でも、僕の言葉を理解できる日本の子供達の為に、何とか「ああ日本人として生まれて良かった」と思わせてあげたい。

その為には、隣国との競争に勝たねばならない。
別に彼らを不幸にしなくても、彼らが日本を恨まないように日本が幸せに勝つ方法は有るはずだ。
そういう方向性を見据えて、考えないからいけないのだ。
ビジョンを持って、戦略を考えて、という努力をしないからいけないのだ。

早々