あれは2009年11月の話。

帰りの飛行機の時間が同じだった伊橋さん、先輩の安部さん、スタッフの尾崎さんと行動を共にしていた。

ジンギスカンを食べたり、時計台を見たりと、はじめての札幌を堪能し、のんびり過ごしていた。

レスラー3人はみんな心の中で「のんびりしても尾崎さんがいれば大丈夫だろう。」と思っていた。

しかし、そろそろ帰ろうというときに尾崎さんが

「あれ…時間やばくない?いや、本当やばいかも…」

と…

我に返り、一気にみんなで帰りの飛行機に間に合わせなきゃと走り出した。

走って、走って札幌駅に入った頃、自分が気がついた…

「伊橋さんがいません!」

見捨てられないと少し待っていると、険しい顔で必死に追いつこうと伊橋さんが走ってきた。


そして、一言
「石井さん、吐きそうです…。トイレ行っていいですか?」

そんな時間はないと自分は「ダメです!」と即答し、電車に伊橋さんも乗せた。

この時の伊橋さんの表情は忘れられない。たまに思い出し笑いを未だにしてしまう…

電車に乗り、あとは間に合うことを祈り、自分は電車を調べてみると

石井「あ!間に合うかもしれません!着いたら走りましょう!」

間に合うかもという希望を胸に電車に乗っていたが、異変を感じた。駅の順番を見ていると、なんかまだまだ着かない気がするのだ。

そこて再び到着時間を調べると…知ってしまった…。間違えていた。

石井「すみません…自分が調べてたのは『千歳』でした…。『新千歳空港』は飛行機の出発時間くらいに着きます…。」

しかし、なにかしらで飛行機の出発時間が遅れるかもしれない。わずかな可能性にかけて着いたら走ることにした。

安部さんは駅表を見ながら「あと何駅」と数えていた…。気持ちはわかるが着く時間は決まっている…。


そして、なんとか新千歳空港に着いたが、帰りの飛行機には間に合わず、その日は伊橋さんにお金を借りて一本遅らせて自腹で帰った。

忘れられない思い出だ。



悲劇が起こる前の写真。