競輪選手はスネ毛を剃る。

なので、僕も競輪選手を目指し自転車競技を始めたときからレース前はスネ毛を剃る事に抵抗は無かった。

あこがれの競輪選手が剃っているのだからそれを目指すペーペーの僕が剃らなくてどうすると、

剃る理由はよくわかっていなかった、
当時の部活の先輩は
『怪我防止だよ、落車したらスネ毛が有ると治り遅いし手術なんかする時もまず毛を剃るだろ』
と言っていた。


もちろんその先輩もツルツルに剃っていた、
当時、高校生だった僕の心にその言葉は凄くカッコよく聞こえた。


怪我前提で出走するなんて武士みたいでかっけー!
中二病の抜けきらない高校生にとって、刀を自転車に持ち替えた現代の侍にすら思えた。


それから月日は流れ僕も晴れて競輪学校に入ることが出来た。

競輪学校の入学には技能試験と適正試験と2種類の試験がある、自転車経験がある者が自転車に乗り1000mと200mのタイムを計測して合否を決める技能試験と他競技の身体能力に自信がある者が体力測定を行いその優劣により合否を決める適正試験だ。

僕は技能試験で入学した。

学校は全寮制で風呂は大浴場である。
入学してすぐタイム計測があり、その前日の大浴場はスネ毛を念入りに剃る技能試験合格組が目についた。

適正試験合格者はスネ毛を剃る技能組を不思議に思い宿直の教官に聞いたのだろう。
その日の終礼で教官がスネ毛を剃る理由を余った時間でぶっきらぼうに話していた。

『なぜスネ毛を剃っている者がいたのか適正の奴に教えてやる、スネ毛を剃る事によって毛がなくなるな?毛がない毛がない毛がない怪我ない怪我ないようにゲンを担いでいるんだ』


僕は失望した、
そこには鳥が飛ぶために翼が生えているような、ナイフが物を切るためにその形になったような、スネ毛を剃ってツルツルになることによる何か機能美のような幻想を抱いていた僕は、その夜、競輪学校の周りの深い山々に向かって叫んだ。


『ダジャレじゃねーか!!』


あれから何年、何やら競輪界にはスネ毛どころか色々な毛を無くすブームがきている。
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この薬剤、毛を溶かして剃りにくいキワッキワのところまでツルツルになるのだ。

最近、上位の選手は全員ではないが大事な所の毛が無い選手が増えたように思う、いわゆるパイパンというやつだ。

一選手である以上、上位がやっているのでは僕もやらなければと、薬剤を股間から脚の付け根である尻の穴の周りまで添付してツルツルになったみた。
そして、やってみて一つ分かったことがある。




屁の音が高くなる。




大臀筋が発達した我々にとって毛とは、尻穴から出るガスを通すための通気口になっていたようだ、それを排除してしまったがために右と左の尻の密着係数が上がり、高い破裂音を生み出すようになってしまったのだ。

フロントがツルツルになったのは確かに毛が絡まらないので快適だ。

しかし、スカすつもりでした屁にまでピチピチという高い音が付いてくる事態は、いただけない。
上位がやっているからと見切り発車でおこなった 
この愚行にちゃんとした意味がある事を願う。




※スネ毛に関しては空気抵抗軽減とか諸説あるらしいです。