序文

日本社会はいま、出生数の歴史的低下、急速な高齢化、そして若年層の親密な関係形成の困難という三重苦に直面している。合計特殊出生率(TFR)は2023年時点で1.20前後とされ、人口を安定させるための2.07を大きく下回る。未婚若年層における性交渉未経験率は1970年代の約2割から長期的に上昇し、2015年には男性42%・女性44%、2021年には男性47%・女性52.5%に達した。すなわち、20代後半~30代前半で“経験なし”が2人に1人という構造的な現象が定着し、恋愛・結婚・出産へとつながるプロセスそのものが細っている。

これに伴い、婚姻件数は縮小し初婚年齢は上昇、ライフコースの遅延が社会全体の活力を削いでいる。こうした背景のもと、性生活自由合意党(LFCP)は、性生活を“恥”ではなく“尊厳と知識”として扱い、合意と安全の文化を広げることで、親密さを育む社会基盤を再構築することを目的に立ち上がった。本白書は、日本の現状を精緻に分析し、性感染症(STI)の拡大と経済損失の全体像を示し、国際比較に学んだ政策パッケージと実装ロードマップ、測定可能なKPI、そして10年・30年・100年の未来像を提示するものである。

 

スローガンと理念【スローガン】

 

(1)安全があるから、愛を育める。

(2)コンドームは愛のインフラ。

(3)合意が文化を強くする。

(4)恥ではなく、知識と尊厳を。

(5)健全な親密さが、未来を増やす。

これらは、自由・合意・安全・家族・科学の5原則に対応し、政策判断と運用の羅針盤となる。

【5原則】

第一に自由――性的自己決定権と多様性の尊重。

第二に合意――「YESはYES、NOはNO」を社会規範として定着。

第三に安全――性感染症の予防・検査・治療を公共インフラとして保障。

第四に家族――望む人が恋愛・結婚・出産まで進める社会環境を設計。

第五に科学――EBPM(エビデンスに基づく政策立案)を中核に据える。

これらを統合することで、“知識と尊厳にもとづく親密さ”を社会の標準にする。

 

日本の現状分析(未経験率・出生・婚姻)

 

未婚18‒34歳の性交渉未経験率は、1970年代:約20% → 1990年代:約30% → 2015年:男性42%/女性44% → 2021年:男性47%/女性52.5%と上昇トレンドが続く。出生率は1970年代に2.0超だったが2005年1.26、2023年1.20前後へ低下。婚姻件数は長期下落、初婚年齢は上昇し、恋愛の“入口”と家庭形成の“出口”の双方でボトルネックが顕在化している。

この構造には、

(a)出会い機会の減少(地域共同体・職場・学校での接点の希薄化)

(b)経済的・将来不安(非正規雇用の増加、可処分所得の伸び悩み、住宅・教育費負担)

(c)性教育の不足(同意・避妊・STIの知識ギャップ)

(d)文化的規範(性を語りにくい同調圧力、失敗回避バイアス)

(e)都市部の孤立と時間貧困

 

など複合要因が絡む。

 

性感染症(STI)の拡大と医療実態

 

梅毒:2000年代の年数百件から増勢に転じ、2023年14,906件(過去最多)。感染拡大の背景には、検査アクセスの不足、匿名・迅速検査のハードル、性的ネットワークの変化、症状の軽視がある。

HIV:年間新規約900件、治療患者約3.4万人。抗HIV療法は生命予後を大きく改善する一方、1人あたり年間約240万円の薬剤費が継続発生する。

クラミジア・淋菌:若年層で多く、定点報告を超える潜在感染が存在。不妊・骨盤内炎症性疾患(PID)、早産リスクの上昇と関連。

HPV:子宮頸がんの主要因であり、予防接種・検診の両輪が不可欠。国際的にはWHOが「1日100万件以上の可治性STI新規感染」「年間3億7千万件超」を報告。

 

国際的にはWHOが「1日100万件以上の可治性STI新規感染」「年間3億7千万件超」を報告。梅毒は2020年710万→2022年800万と増加。抗菌薬耐性を背景とする淋菌対策の難度上昇も懸念され、検査・治療体制の強化は世界的な最優先課題である。

 

経済損失の全体像(保守的推計と潜在コスト)

 

直接医療費:HIV 3.4万人×240万円=約816億円/年。梅毒は標準治療を用いれば1.5億円規模。クラミジア・淋菌は症状・合併症・再感染を加味すると、関連医療費・不妊治療費で年間1,000億円規模。不妊治療は配偶者間人工授精(AIH)、体外受精(IVF)、顕微授精(ICSI)など高額化しがちで、性感染症由来の比率を20%抑制するだけでも100億円規模の削減が見込める。

 

間接コスト:感染による欠勤・プレゼンティーイズム(出勤しても生産性が出ない)で年間数千億円規模。仮に感染者50万人×所得損失10万円で5,000億円。さらに母子感染対策、行政の啓発・追跡費用、社会的スティグマ対策の支出を合算すれば、保守的に見ても年間2,000億円規模。結果として、**総損失は少なくとも8,000億~1.2兆円、潜在的には約2兆円規模**に達する可能性が高い。

 

国際比較(欧州・米国・アジア)

 

欧州:オランダやスウェーデンはCSE(包括的性教育)+検査の匿名・無料化+コンドームへの容易アクセスで若年層のSTI率を抑制。学校では同意・避妊・関係性教育を段階的に実施。

米国:州差が大きく、禁欲教育中心の州はSTI率・望まない妊娠率が高止まり。一方、包括的性教育と検査支援が整った州では低下傾向。

アジア:韓国・台湾は出生率は低いが、検査・教育制度で日本より進歩。匿名検査の普及、同意教育の明文化など、日本が学べる点は多い。

 

政策パッケージ(短期・中期・長期)

 

短期(1‒3年):

(1)コンドーム無償配布(学校・大学・保健所・繁華街の配布拠点)。

(2)STI検査無料クーポン(郵送匿名・夜間即日・週末拠点)。

(3)Consent(同意)キャンペーンを国民運動化。

(4)アプリ企業・ライブイベントと連携した啓発。

中期(4‒10年):

(1)学習指導要領の改訂で包括的性教育を必修化。

(2)自治体に「性の健康センター」を整備。

(3)住宅支援・奨学金返済軽減と婚姻・出産支援を連動。

長期(10‒30年):

(1)出生率1.6以上を目標。

(2)STI半減。

(3)社会保障費の成長カーブを抑制し持続可能性を確保。

(4)多様性と合意文化が成熟した“親密さフレンドリー社会”を実現。

 

実装ロードマップとガバナンス

 

最初の100日:主要都市で検査無料化・深夜拠点・配布をパイロット。

半年      :KPIダッシュボード(未経験率、検査受検率、STI報告、婚姻件数)を公開し透明化。

1年                  :全国展開。

3年                  :独立評価機関による効果検証と政策チューニング。省庁横断タスクフォースと自治体連絡会議を常設し、民間・N PO・医療者の協働でPDCAを回す。

 

KPI(測定指標と目標値)

 

(1)未経験率:5年で男女とも▲5ポイント。

(2)梅毒報告:3年で▲30%。

(3)HIV新規:5年で▲35%。

(4)検査受検率:18‒39歳で30%以上。

(5)婚姻件数:+10%。

 

指標は四半期で公表し、自治体別・年齢別に可視化。数値が悪い地域には重点介入を行い、改善地域のベストプラクティスを全国展開する。

 

費用対効果(ROI)

 

投入コスト:配布・検査・広報で年間数百億円。

便益             :医療費・不妊治療・労働損失・行政費の削減で年間数千億~約2兆円。

国際的には、性感染症対策の投資1に対し最大7の社会的便益が見込まれるとの報告がある。よって、財政健全化の観点からも極めて合理的な“攻めの公衆衛生投資”である。

 

反論とリスクへの対応

 

「性を軽率にするのでは?」への回答:合意教育・避妊・検査の知識は行為の増加ではなく“リスク低減”に効く。欧州の知見でも包括的性教育は望まない妊娠・STIの減少と関連。

「費用が大きい」への回答                     :医療・不妊・労働損失の削減効果が上回る。悪化を放置すれば、長期の社会保障費と人口減少コストはさらに膨らむ。

「文化的抵抗」への回答                        :恥ではなく尊厳と知識へ。教育と対話で合意文化を育む。

人事体制(現時点)

党首▶本庄

共同代表▶どっかのゆきの

 

広報担当▶ホアキン

幹事長▶ふうた

党員関東支部部長▶Neko太郎

組織対策委員長▶わい

(未定)政策調査会長、国際交流担当、青年局長、女性局長、財務担当、選挙対策委員長。専門性と多様性を尊重し順次任命する。

 

出典

 

国立社会保障・人口問題研究所「出生動向基本調査」

 

 


厚生労働省・国立感染症研究所の感染症統計

 

 

 

WHO/UNAIDSの国際統計

 

 

 

OECDの家族政策・出生データ

https://www.ipss.go.jp/syoushika/bunken/data/pdf/sh17020111.pdf

 

 

等の公開資料に依拠する。

 

国際比較はWHOのSTIファクトシート(世界で1日100万件以上の新規感染、2020年合計3億7千万件超)や、梅毒推計(2020年710万→2022年800万)、OECDの少子化関連指標の整理を踏まえた。具体的な自治体・医療現場の知見は、国内学会・保健所の公開資料・実務者の報告を参照している。未来像と結語10年後、性教育と検査は社会の標準となり、若者は自然に出会い恋愛を育みやすくなる。STIは減少へ転じ、未経験率は低下、出生は回復基調となる。30年後、合意文化は社会の常識となり、少子化と医療費増の複合危機は緩和、社会保障は持続可能なレンジに収まる。100年後、性生活は愛と尊厳の文化インフラとして完全に定着し、人口・経済・幸福が調和する。性生活自由合意党は、恥ではなく尊厳、沈黙ではなく知識、対立ではなく合意を軸に、日本の親密さの生態系を回復する。安全があるから、愛を育める。コンドームは愛のインフラ。合意が文化を強くする。健全な親密さが、未来を増やす――。