テリー・ホワイト

文集文庫

☆☆


退役軍人(今年の仲介屋)、戦争経験による自閉症者(殺し屋)

執念で元相棒を殺した相手を探し続ける元刑事


戦争体験退役者もの

犯罪

殺し屋

デカ

BAD END

ネトラレ?!系



まず 初めに

こちらはBLジャンルの小説ではありません

あくまで 犯罪小説というジャンルの作品になります


戦争での強烈な体験を受けて

人とうまく距離を保つことができなくなった自閉症のジョニーと

彼が唯一人、信頼し打ち解けられる同じヴェトナム軍人だったマックは

流されるまま「殺し屋」稼業を続けていた。

 マックのただ1つの悪癖、ギャンブルのせいで

裏世界の顔役ににらまれ、殺しの手伝いを引き受けることになったためだ。

 今日もいいつものようにマックの鉄壁のリサーチとジョニーの電光石火の銃の腕で

何事もなく仕事をかたずけている・・はずだったのに、、、

 現場には標的とは別に囮捜査中だったデカがいた。

 わずかのためらいの後、その男も始末し、二人はまた闇に消えていった。

 しかし、そのデカの相棒が恐ろしく執念部深い男で

今まで二人の存在に気づくものはいなかったのに、

この刑事・サイモンの出現で二人はやがて追いつめられていき・・・。




こちらはMWA賞も受賞している

まじめな?!小説なので

当然二人はカップルでもないし、Hシーンもありません


ただ、心の病のためにマック以外の人間をすべて拒否し、

マックだけを小鳥のプリンティングのように求め、愛するジョニーの

時に確信を得たストレートで純粋な言葉が胸を打ちます、

 また、もう一人の主人公・マックも退役軍人で家柄も縁故もない立場なのに

お荷物のようなジョニーを引き受けてしまう弱さとやさしさを持った男です。

さらに、二人を追いつめる元刑事・サイモンもユダヤ社会から浮いた存在で

仕事にのめりこむあまり周りとうまく対応できない不器用な男です。

 殺し屋も追いつめる男も根っからの悪人でないので

どの主人公に心情を寄せてもツライです。


作品は3部構成になっており

プロローグ「きっかけとなる殺しの場面」

1部 「マックとジョニー 物語」 マック ジョニー視点 ややマック寄り

2部 「サイモンの物語」 サイモン視点

3部「マックとジョニー、サイモン」 3者それぞれからの視点

エピローグ 「?」


1部では戦争記述や退役後の倦んだ暮らしぶりなど

マックとジョニーのまさに堕ちていく様子が散々描かれていきます。

そんな暮らしの中でもジョニーの病状特有の妙な明るさが救いになったり

よりマックを苦しめたりと読み進めることがツライ場面が多いです。


2部になってサイモンという新しい主人公が現れ、

(マックとジョニーは登場しません)

サイモン側から「殺し」の場面を目撃、追跡するシーンや

サイモンが相棒を殺した犯人を追ううちに

心のバランスを崩し、家庭や仕事を失うタイトロープ上の暮らしや

同じくどんどん事件にのめりこむうちに堕ちていくさまが描かれていきます。


そんな3人が3部で出会ってから・・・

ここからはぜひ買って読んでください

普段ライトノベルしか読まない方にとっては

特に最初の戦争時代のマックとジョニーの物語は

読んでいても苦しいかもしれませんが

二人のお互いがお互いを究明浮き輪のように

狂おしくすがり合うなんともいびつな関係が切なく

物語の終盤に向けた哀れささえ漂う

二人きりのままごとのような暮らしぶりから

目がはなせなくなっていきます。

 2部からはマックとジョニー視点で読んできた読者には

邪魔者のようにしか感じないかもしれないけど、

だんだんサイモンの不器用にしか生きられない

まっすぐさや、孤独感に触れ

どんどん彼にも興味がわいてくると思います、


とにかく このBL愛好家の方にも

ぜひおすすめできる作品だと思います。


こちらの作品はもともと古いのですが

たしか今年になって新装丁でフォト仕様の表紙になってから

ぐーっと感情移入しやすい本になってると思います。

ぜひ、結末は本誌で!