山藍 紫姫子 角川書店 小林智美 ☆☆☆☆
能楽師×能楽師
六百年の歴史を誇る能楽界最大流派観月流三十代目宗家をつぐ美貌の能楽師、観月鏡花(受)。観月のために幼い頃より観月の古参衆に身体を捧げた鏡花が、華麗なる舞の裏側に秘められたものは――。また そんな鏡花の異母弟の明煌アキラ(攻)は理不尽な陵辱を強いられた時期もあり、鏡花を憎く思ったこともあったが、どれほどに惨い仕打ちを受けても、アキラの心は変わらなかった。奇跡のように美しく、貴い異母兄を、崇拝し、恋い慕っていたが、鏡花が流派のために名門と言えども内情の苦しい流派のために男たちの捧げられることを、想い、切ない気持ちと強い欲望を抑えることができない。
咲き乱れる、恋の妖花 能楽界最大流派・観月流を襲ぐ美貌の能楽師・観月鏡花。聖と淫の二面を裡にひそめた艶かしくも美しい彼を求めて、嫉妬と欲望渦巻く男たちの狂宴が始まる―。甘美な官能の世界を描いた禁断の愛の物語。
前作「花夜叉」の続編なのでそちらを読んでからこちらをお読みすることをおすすめします
「花夜叉」で異母兄弟の憎しみが解け、アキラも自分の心を正直に認め、兄への思慕をかなえるところまで描かれています。
しかし、この作品の特徴でもあることですが、主人公?!カップル言えるのか分からないほど 受である鏡花は
多くの男に自分の意思なく交わります。彼の境遇であればしかたがないことですが、観月流を支えるためその身と引替えに後援の資金を引き出すことを強要されているからです。このあたり、どうしても主人公のカップル以外嫌な方はどうしても受け入れられない作品ですね
私自身「花夜叉」の時はページをめくるのが辛くなるくらいこの鏡花は10歳の幼い頃より流派のために身体を削り、生きる運命とされてきて可愛そうで可愛そうでたまりませんでした。なんとか異母弟のむりやりとはいえ、最後は心も通わせて「花夜叉」でのエンドを迎えて少し 心拍数下がりましたが・・・・。
今回「花鬼」でも鏡花は辛い日々を送っています。流派最大のパトロンである齢70を越える老人三ノ宮翁に攻められ、その孫である利彦にもドラッグをかがされて、無理やりされてしまいます。またそれに嫉妬した三ノ宮に変態的な器具を使われ、散々にもてあそばれ、痴態を披露させられる強い屈辱感と羞恥を強いられる。
そんな中、アキラまでも新たな流派の資金のために歌舞伎の名門家、千手屋の歌舞伎役者 女形の16歳の喜智弥キチヤ (受)に金で買われることになる
そんでもって、キチヤは顔は10代の頃の鏡花さんにそっくりで心までアキラさんはキチヤさんの傾いていってしまいます。(どこまで鏡花さんって可愛そうなの~ アキラ君まで鏡花さんを裏切るなんて酷いよ 酷いよ)
思わずページを進めるのが恐いくらい。
しかし、このたくらみはなんと16歳のキチヤの謀略だった(顔は10代の鏡花そっくりだというがずいぶんな悪女っぷりしたたかな子なんだ) 実は実の父 5代目喜左衛門に禁忌の愛を感じ、10年来の関係を続ける父と鏡花の中を引き裂き、父の愛を自分のものにしようという試みだった
(って同じく10代のころから鏡花さんはキチヤさんのおやじさんともお金のために関係させられていたのかと想うとかわいそうでかわいそうでやりきれなくなります)
ここまであらすじ含めて書いてるとなんてホラーなくらいの仕打ちなんだって痛くなってくると思いますが、
しかし、山藍先生 その不思議な文章でたゆたうような官能美をみせつけてくれます。
受の鏡花もどんな酷いプレイ、仕打ち、数をこなされても心を折らず凛として気高く誇りをもって生きているところがそうさせないのかもしれません。それに、どんなに汚されようと、光に集まる蛾のようにすべての男は鏡花のもとの這い蹲る存在なのかもしれませんね、見方を変えれば、
また 今回は終わり、少し心がすーっとしました。
鏡花の一番の理解者でもある付き人の真木の計画で(そうだろう そうだろう ここまでの流れすべて彼の手の上で遊ばれていただけのことなんだろう)今まで鏡花を好き勝手に持て遊んできた観月流の古参達に手を引かせ、五代目からも手を引かせ、鏡花の周りから男たちを排斥しはじめていく。少しずつ鏡花さんにも春が見えてきそうだなって感じました。
しかし、最後に感じたのは鏡花さんのカップリングって身体関係はアキラ君かもしれないけど
実は、真木さんなんじゃないの?!だって一番鏡花さんの全幅の信頼寄せてるしね。
あ~鏡花さんの心の恋人は真木さんで、身体の隙間を埋めてくれるのがアキラさん ってことかな
ある意味 贅沢な関係なのかもね
おす考えると今までの彼の芸のために犠牲にしてきた10年あまりの歳月も報われるっていうことなのかな?
とにかく山藍語録といってもいい美しい文章 小林智美先生の美麗なイラスト 見てください!