長い沈黙が流れた。

 

陽子は意を決して天帝に向き合った。

陽子 「天帝。私は玉京には行けません。私には待っている者がいます。それは慶国の民と・・・景麒です。」

延麒 「陽子、お前、天帝の命を断るってのか!!」

天帝 「そうか。・・・そう言うと思っていた。」

陽子 「申し訳ありません」

 

こんどは天帝が沈黙の時を刻んだ。

天帝 「では、こういうのはどうじゃ。陽子は今まで通り慶国の王としての務めに励む。儂は陽子の意見を聞きたくなった時にお前を呼ぶ。もっとも体は慶国の王宮にいても良い。この石を授ける故、居ながらにして儂や諸神と話ができるのじゃ」

 そう言って天帝は賢者の石の一つを差し出した。

 少し考えて陽子は返答した。

陽子 「私が慶国にいるのであれば・・・微力ながらお手伝いいたします」

天帝 「そうか。儂の願いを聞き入れてくれるか。嬉しいぞ♪」

 天帝は満足そうにうなずいた。

延王 「陽子、天帝を妥協させるとは大した奴だ」

泰麒 「妥当な着地点だと思うよ」

延麒 「陽子、お前ってやつは・・・・」

陽子 「みんな、ありがとう」

 

天帝 「では、結論は出たな。諸神よ、景王陽子を迎えてやってくれ」

諸神は一斉にうなずいた。

 

西王母「退りゃ、そして戻るがいい」

 西王母が一言発した。

 するとあたりに光が満ちた。陽子たち「十二国世界の真実探索隊」は一瞬の後に延国王宮・玄英宮に姿を現した。

 

延王 「お、帰り道は楽だったな」と言いながら梨耀の肩を抱いている。

延麒 「陽子、お前やっぱり凄いな。あの天帝と渡り合ったなんて・・・」

泰麒 「天帝の前でも陽子は陽子だったね」

陽子 「みんな・・・本当にありがとう。でもこれからが真の戦いよ。」

延麒 「戦いって、相手は?」

陽子 「天帝諸神も力が及ばない『自然の摂理』。」

延麒 「勝算は?」

陽子 「わからない。でも私は私のやり方で全力を尽くすだけ」

泰麒 「陽子らしいね。」

延麒 「まずは景麒に報告しろよ。あいつ首を長くして待ってるぞ」

陽子 「そうね。もし首が伸びてたら名実ともに『キリン』だわ^^」

延麒 「それって・・・ぷっ^^」

泰麒 「そりゃいい^^」泰麒は即興でキリンの絵を描いて延王に見せた。

延王 「何だか知らんが愉快だな^^」

梨耀 「面白そうじゃな^^」

 玄英宮に笑い声が響いた。

 

 遠く離れた慶国・金波宮で景麒が大きなくしゃみをしたことは言うまでもない。

 

 

 

 赤楽八年、上、天帝を求めて黄海に赴く。幾度の妖魔の襲来を退け玉京に至る。

 上、天帝より神々諸神に列するを求められ、これに応ずる。

その身は慶国に在るを許される。景麒、大いに慶ぶ。

                               『慶史赤書』

 

***************** 完 *********************

 

■どうでしたか?最後は駆け足だったけど私なりの十二国世界の解釈です。

原作があるので使える素材が制限されている中でのこれが私の現在の精一杯でした。

 

最後に「十二国記」原作者の小野不由美先生に深い感謝を捧げます。そして勝手にパラレルワールドを書いてしまって申し訳ありませんでした。伏拝重々。

 

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                     筆者 雪椿姫