ちょっとこれまでの「すごい新薬候補」の中でもレベチな気がしている。正直、国の援助のもとどんどん進めてほしいです

がんを死滅させる細菌、アマガエルから発見

という新聞の見出しは知っていたのですが、あまり詳細を調べずにおりました。この手のニュースはよく見かけるので。

ただ、北陸先端大さんのプレスリリースを見ると、ちょっとこれまでの研究とは一線を画すという印象です。

 

 

理系だけど、化学系でバイオはかじった程度でしかないので、認識間違いあったら申し訳ないと思いつつ書きます!

 

マウスを用いた大腸がんモデルにおいて、E. americanaをたった一回静脈投与するだけで、腫瘍が完全に消失し、100%の完全奏効を達成

抗PD-L1抗体投与群(免疫チェックポイント阻害薬)や化学療法剤との比較も行っていますが、抗PD-L1抗体投与群では完全奏効(CR)は1例。それに対して、このカエル菌は全例がCRとなっています。大元の論文を読む限り、

 

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カエル菌     :5/5(100%CR)
抗PD-L1抗体投与群:1/5(1匹だけCR)
化学療法剤    :0/5
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この結果が驚異的といわれています(ほんと驚異的だと思う)。

 

・二重作用による抗がん効果
 E. americanaは以下の二つのメカニズムでがんを攻撃します。

  1. 直接的殺傷効果
    通性嫌気性細菌であるE. americanaは、低酸素状態のがん組織に選択的に集積し、がん細胞を直接破壊します。腫瘍内での細菌数は投与後24時間で約3,000倍に増加し、効率的にがん組織を攻撃します。
  2. 免疫活性化効果:
    細菌の存在が免疫系を強力に刺激し、T細胞、B細胞、好中球などの免疫細胞ががん組織に集結します。これらの免疫細胞が産生する炎症性サイトカイン(TNF-α、IFN-γ)がさらに免疫応答を増幅し、がん細胞のアポトーシス(細胞死)を誘導します。

つまり、直接破壊したうえで、免疫誘導で免疫にも破壊させる。そのため効果が強いのだと思われます。

 

放射線を当てたあとに、当てていない部位まで小さくなる効果がたまにでます(アブスコパル効果)。抗がん剤も同様に、壊すことで免疫が反応することはあると思います。

 

今回の場合、がん細胞の周囲に細菌がいっぱいいるので、免疫はまず細菌を追っかけて集まってくるはずです。そこで壊れたがん細胞を見つければ、がん細胞を記憶して一気に叩くようになるよねって話なのかなと思います。つまり、放射線や抗がん剤の比ではない免疫応答が起こるのだと。

 

個人的には、直接破壊のメカニズムがシンプルなことに一番驚いています。低酸素状態の場所を好む細菌なのでがん細胞は住み心地がいいのです。自分で住みやすい場所を探して細菌が移動していく、定住したら一気に壊す……すごくない?

 

抗がん剤が、DNAを阻害してとか、どこどこの経路を遮断してのような経路で殺傷していることを考えると、シンプル。そして、低酸素のがんであればがんの種類を問わずに攻撃できる可能性があります。

 

腫瘍特異的な集積メカニズム
 E. americanaは、がん組織に選択的に集積し、正常組織には全く定着しません。この驚くべき腫瘍特異性は、以下の複合的メカニズムによるものと考えられます。

ほぼ副作用がないということです(人においてはわからないし、一番はLPSリスクが起こらなければってことになりそうだけど)。

 

人の体は細菌と共存しているくらいです。もちろん毒性の検討はこれから必要だと思いますが、安全性は比較的高いと考えていいのかなと思います(昔サルモネラ菌による抗腫瘍効果の研究がありましたがサルモネラとかに比べれば……)。

 

腫瘍再チャレンジ実験では、 E. americanaで治癒したマウス全てにおいて腫瘍が完全に拒絶された(腫瘍が形成されたマウスは10匹中0匹)

簡単にいうと、再度、がん細胞を植え付けても、どのマウスでもがんが育たなかったということです。免疫ががん細胞を覚えたためだと推測されます。

 

これすごいことで、まず再発予防になります。なにより、ここまではっきりとした免疫応答があるのでCR100%も当然だと思いました。

 

一般に、臨床→実際に薬になる率は数%といわれています。有望なものが100個あったとしても、いくつかしか薬にならないと。

 

が、カエル菌は、メカニズムが簡単で、細菌が自分から低酸素の住みかを探して体を巡ります。がん細胞の血管は穴だらけなので細菌が入りやすいという推測もされています。人の免疫系は難しいとはいいますが、腫瘍に届いて入り込みさえすれば!という期待はあります。

 

もちろん、人にいれたときにどんな副作用が出てくるか、本当に人にも効くのかという点はこれからですね。

 

ただ、かなりブレイクスルーになりそうな研究なので、ほんと国に支援してほしい。世知辛いことをいいますが、これがうまくいったらどれだけの利益を叩き出すか!
 

また、いわゆる化学系の薬剤というのは、合成がたいへんなものも多いのです。化学合成薬、抗体医薬は、何十というステップをふんでようやくできるというものも多いです。数日、数週間でささっと合成できるように思えるかもしれませんが、そんなことはありません。ステップ数や合成経路によっては、1年かかるものもあります。

 

そこへいくと、細菌は培養方法が確立し、培養さえはじまれば、基本的には安定供給できます。(ものにもよりますが)化学薬品に比べると、設備投資や作成コストも小さくてすむ可能性があります。そして、(バイオはあまり得意ではないのですが)このカエル菌はそれほど培養が難しい印象は持っていません。

 

まじではよ進めて!!!

 

国が支援を!と繰り返すのは、おそらくこの研究のボトルネックとなるのは、製造&品質管理だと考えているからです。細菌を生きたまま注射する薬なので、「いれてよい」と許可が出るレベルにするまでが難しい気がしています。

 

現状、用量が問題になりそうですが、がんに直接注入するという方法もあるわけで……。ワクチンのように注射で入れるのが楽だとは思います。ただ、再度がん細胞を植え付けても除去できた=問題となっているがんに直接注射して免疫活性がおこれば、アブスコパル効果のようにして体のがんが消える可能性があるのでは?と思います。

 

国が「やる」といって引っ張って企業を動かしてくれればと思っています。

 

なお、すでにフェーズⅠまで進んだ弱毒された細菌(VNP20009)もあります(フェーズⅠで効果がでなかったために止まりました。人への安全性のみ確認となっています)。こちらは、薬剤を組み合わせたら届くのではないか?ということで研究が進んでいます。