2回阪神競馬初日のメイン競走として定着している。
かつては芝2000mで行われていたが、'07より改装によって新設された芝1800mの番組に。

この競走の位置付けとしては4つあるだろう。

1つは今となっては形骸化されている印象もある「東上最終便」
要するに皐月賞GⅠに向かいたい関西馬にとっての最終手段としての位置付け。現在とは逆に東高西低だった時代を含む、東西交流が活発ではなかった当時では、この番組を完勝して皐月賞に向かう関西馬は総じてそんな言われ方をしていた。

2つ目は「クラシック競走へ出走出来なかった馬たちの救済措置的」
外国産馬やクラシック登録をしていなかった馬たちが、取り敢えず出走可能な重賞競走としてのそれ。現在では外国産馬も一部の制約が残っているようだが、一時ほど席巻していない事もあり、収得賞金がたりていれば皐月賞などへの出走は可能であるし、クラシック登録制度についても「追加登録料支払」により出走の道が開けている。

3つ目としては
「春の3歳マイル王決定戦への道」
としての存在価値だ。
今や其れこそが最大の其れと言える気がしないでもない。

残る1つは
「断念皐月賞かつ日本ダービーへの道」
としての其れだ。

以上4つの存在意義を念頭に入れて、過去の優勝馬などについて触れて行きたい。


'88優勝のオグリキャップ号は、昭和から平成に跨いでの活躍をした芦毛の怪物であり、NAR笠松競馬で連戦連勝、圧巻の走りをしていたところを当時の4歳春になってJRAへの転厩が決定、ペガサスステークスGⅢ(当時)を挨拶代わりに優勝しての2戦目だった。前述の2つ目に該当していた同馬は皐月賞は勿論東京優駿GⅠへも当然向かう事が出来なかった。底に'73の競馬ブームの主役・ハイセイコー号との違いがあったが、後に積み上げたGⅠ優勝タイトルは5つ。それ以上に数々のドラマを生み出し、平成初期の競馬ブームを牽引した。

'94のメルシーステージ号は正に「東京優駿最終便」という其れに該当した。ただ皐月賞、東京優駿共に二桁着順に泣いた、同期は三冠馬のナリタブライアン号。父内国産馬で前走のアーリントンカップに続く重賞連勝が最後の勝ち鞍ともなった。

'96優勝のタイキフォーチュン号は関東馬で前年のラジオたんぱ杯3歳ステークスに次ぐ2度目の西下だった。次走は同年より創設されたNHKマイルカップGⅠを見事優勝してみせたが、戦績的には其れが最後に放った輝きともなった。

'99優勝のテイエムオペラオー号は、デビュー3戦目での初勝利からの3連勝目となった。その結果を受けて皐月賞へ、クラシック追加登録料200万円を支払って向かうと大外から追い込んでの差し切りで見事優勝。'00は8戦無敗、芝中長距離のGⅠ競走全てを優勝した。

'01は外国産馬たちに段階的に門戸を開いたクラシック戦線への道、その初年に当たった。同年春の其れは東京優駿への其れで、枠は2頭。条件は指定された重賞競走を優勝した上で、収得賞金が高い2頭に与えられた出走権利だった。ここを優勝のクロフネ号は前年秋より頭角を現していたが、ラジオたんぱ杯3歳ステークスでは優勝のアグネスタキオン号、後のダービー馬・ジャングルポケット号に完敗の3着からの休み明けで、同じ阪神芝二千のここを完勝して向かったNHKマイルカップを追い込みで優勝。其れが決め手となり東京優駿に向い5着に。

その3年後の'04
クロフネ号と同じ厩舎の松田国英調教師が管理していたキングカメハメハ号は、当時臆することなく見せていた拘りを具現させんと、京成杯GⅢでトン頃を喰わされた以後は皐月賞へは見向きもせずNHKマイルカップGⅠから東京優駿を撃破するプランを立て実行した。その前にすみれステークスとここを完勝し、そのプランへと駒を進めた。'02のタニノギムレット号で成し得ることが出来なかった「変則2冠制覇」をそこから2年越し、クロフネ号からは3年越しで遂に其れをやり遂げた次なる目標は天皇賞秋GⅠ制覇による、主要3根幹距離のGⅠ同一年制覇。秋の初戦、当時阪神芝2000mで行われていた神戸新聞杯GⅡを予定調和の中での優勝を決めていざ目標実現へ、との矢先に屈腱炎発症につき競走生活継続を断念した。種牡馬入りすると1つ下の同じ馬主のスーパーホース・ディープインパクト号や同期のハーツクライ号らと共に、ドゥラメンテ号などのGⅠホースを輩出しているチョー有力種牡馬として活躍中だ。
根幹距離トリプルゲットへのチャレンジは'08のディープスカイ号が臨んだ。ここの優勝を足掛かりにトップホースへと駆け上がり、ダービー優勝の際には四位洋文騎手が優勝インタビューで暴言を吐いたという曰く付きとなったのはご愛嬌として、毎日杯優勝からは神戸新聞杯優勝までキングカメハメハ号と同じ結果を出して臨んだ天皇賞秋だったがあわやのシーンこそ演出するも優勝馬と同タイムの3着で悲願達成ならずに。その後も勝てなかったが全て3着以内と高値安定を続けた。種牡馬としては今の所キングカメハメハ号には遠く及ばないが、キョウエイギア号がジャパンダートダービーJpnⅠを優勝している。昆貢厩舎所属故にキングカメハメハ号などとは厩舎の先輩ではない。しかも天皇賞秋で先着した2頭の名牝のうちの一頭、ダイワスカーレット号が松田国英厩舎所属として立ちはだかった格好だった。

'10優勝のダノンシャンティ号も松田国英厩舎所属。同年の牡馬戦線は群雄割拠だったが同馬のここの優勝と次走のNHKマイルカップでの優勝は同期の面々の中でも高い評価を与えるべき結果。特にマイル王では東京芝1600mを 1:31.4 という破格のタイムで優勝はキングカメハメハ号の其れを1秒も短縮させた。しかしその激走が祟ったのか、東京優駿へのゲートに入る事が出来なかった。

史上7頭目の三冠馬が誕生した'11の優勝馬は、門戸が開かれた外国産馬ではなく、クラシック登録をしたくても出来ない騸馬のレッドデイヴィス号。前走のシンザン記念GⅢではその三冠馬を退けての優勝だった。

'13優勝のキズナ号は報知杯弥生賞GⅡを5着で皐月賞は諦めてここに。優勝すると京都新聞杯GⅡに向かって優勝すると、東京優駿では弥生賞で権利を取れなかったが収得賞金が十分にあったエピファネイア号と再戦、勿論ロゴタイプ号ら皐月賞組とも対戦となり、そこを快勝してダービー馬となった。

昨年優勝のスマートオーディン号は、休み明けの前走は馬体重16㌔増が祟ったか6着に敗れて此方に向かって来た。馬体を絞り見事に雪辱を晴らすと京都新聞杯も優勝して東京優駿に向かったが6着。同馬も松田国英厩舎所属で、東京優駿以来休養中である。同馬はダノンシャンティ産駒であるから此処とNHKマイルカップの父子制覇を成し遂げた格好。

この様に、一部の優勝馬から伺えることは、既に東上最終便としての役割は終わっており、此処からNHKマイルカップ又は京都新聞杯を経てダービーへと向かうのが一部の優勝馬のトレンドとなっている様だ。特に松田国英厩舎所属馬が複数優勝しており、1つ挟んでダービーへという道が出来ているような印象だ。

今年は松田国英厩舎所属馬の特別登録は無いが、池江泰寿厩舎のセレクトセール高値取引馬や、松田国英調教師の門下生だった角居勝彦厩舎の有力馬の名が見られる。

🏇💨