TikTokを見終えたあと、「何を見ていたのか思い出せない」と感じることがある。確かに楽しかったはずなのに、具体的な内容はすぐに消えてしまう。一方で、次々と流れてくる動画を見ている間は、強い刺激を受け続けている。この矛盾は、短い動画と記憶の関係を考える手がかりになる。


 一般に、記憶に残るためには、ある程度の時間や反復が必要だと考えられている。しかし、TikTokの動画は短く、次々と切り替わる。そのため、一つ一つの動画に深く関わる前に、次の刺激が上書きされていく。結果として、「見た」という感覚だけが残り、内容は定着しにくくなる。


 ただし、すべての動画が記憶に残らないわけではない。特定のフレーズや音、強い映像表現は、断片的に思い出されることがある。ここで残っているのは、物語や意味というよりも、印象や感覚である。TikTokにおける記憶は、連続したストーリーではなく、点のように散らばって存在している。


 このような記憶のあり方は、必ずしも否定的に捉えられるべきものではない。短い動画は、深い理解よりも、瞬間的な気分の変化や感情の喚起を目的としている場合が多い。その役割においては、長く記憶に残る必要はないとも言える。


 TikTokの動画が記憶に残りにくいと感じるのは、私たちが従来の「理解して覚える」という基準で評価しているからかもしれない。短い動画は、記憶の質そのものを変えている。内容を覚えるのではなく、雰囲気や感情が一瞬通り過ぎる。その体験自体が、TikTokというメディアの特徴なのだろう。