映画「ドライブ・マイ・カー」感想 | S blog  -えすぶろ-

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-人は年をとるから走るのをやめるのではない、走るのをやめるから年をとるのだ- 『BORN TO RUN』より
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上映時間3時間、かなり気合いを入れて上映2日目の土曜日に映画館で観てきましたが、全く長尺も気にならずお尻も痛くならず、ずっと映画の世界にのめり込んで観ることができました。これまで40年以上映画を観てきましたが、紛れもなくその中でもトップクラスの傑作映画でした。コロナ禍の中ですが、それでも劇場に観に行って本当に良かった!

映画は、村上春樹の短編小説集「女のいない男たち」の中の「ドライブ・マイ・カー」が一応の原作です。この小説では劇中劇としてチェーホフの「ワーニャ伯父さん」が使われいて、「ワーニャ伯父さん」と「ドライブ・マイ・カー」とがリンクするような内容になっています。

そして「一応」と書いたのは、「女のいない男たち」から「シェエラザード」「木野」という2つの短編からもエピソードを引っ張ってきていて、更にそこに脚本も手がけた濱口監督が付加させたオリジナルの内容も加わっています。「ドライブ・マイ・カー」なんていう短い小説が何で3時間???と思っていましたが、中身が濃い!納得しました。

この映画を観る前、あらかじめ「女のいない男たち」全編と「ワーニャ伯父さん」を読んで予習して観ることがお薦めです。

「ああ、こんな風に村上春樹とチェーホフの名作に更に手を加え、魂の救済のようなところまで描き切ってしまったのか!!」と濱口監督の力量に感嘆するはず。

カンヌで脚本賞を受賞したのも納得の重厚で精緻でものすごく感動的なストーリー展開でした。

 

 

基本的に原作でも映画でも、「ワーニャ伯父さん」の配役との関連は下記の通りです。

家福(西島秀俊)=ワーニャ、家福の亡き妻・音(霧島れいか)=エレーナ、運転手渡利(三浦透子)=ソーニャ、亡き妻と不倫してた高槻(岡田将生)=アーストロフ

 

この運転手渡利役の三浦透子の演技には終始圧倒されっぱなしでした。特に終盤、北海道での西島秀俊との演技にはもう・・・

今後の活躍に期待大!!

 

そして、絶望したワーニャを姪のソーニャが慰める「ワーニャ伯父さん」感動のラストシーン。映画の劇中劇は日本・韓国・中国・フィリピンの俳優がそれぞれ母国語で演技するという設定(コミュニケーションに関する監督のメッセージが強く感じられる)ですが、なんとソーニャ役は韓国語手話で話すイ・ユナという女優(パク・ユリム)。

この女優さんの演技がまたものすごかった!是非、このシーンを楽しみにして観て頂きたいです。こちらの魂まで救済される・・・涙腺崩壊( ノД`)間違いなし。。。

 

ソーニャ :

でも、仕方がないわ、生きていかなければ!

ね、ワーニャ伯父さん、生きていきましょうよ。長い、はてしないその日その日を、いつ明けるとも知れない夜また夜を、じっと生き通していきましょうね。

運命がわたしたちにくだす試みを、辛抱づよく、じっとこらえて行きましょうね。今のうちも、やがて年をとってからも、片時も休まずに、人のために働きましょうね。そして、やがてその時が来たら、素直に死んで行きましょうね。あの世へ行ったら、どんなに私たちが苦しかったか、どんなに涙を流したか、どんなにつらい一生を送って来たか、それを残らず申上げましょうね。 すると神さまは、まあ気の毒に、と思ってくださる。その時こそ伯父さん、ねえ伯父さん、あなたにも私にも、明るい、すばらしい、なんとも言えない生活がひらけて、まあ嬉しい! と、思わず声をあげるのよ。そして現在の不仕合せな暮しを、なつかしく、ほほえましく振返って、私たち―― ほっと息がつけるんだわ。

 

パク・ユリム演じる韓国語手話でソーニャ役に挑む女性イ・ユナ

 

パンフレットはB5中綴じ32頁900円でした。監督・俳優へのインタビュー記事が良かったです。

 

 

三浦透子のインタビューが素晴らしい

 

「ドライブ・マイ・カー」というタイトルは村上春樹が大好きなビートルズのこの曲ですね。

歌詞は、映画スターになりたい女の子が自分に気のある男の子に、

「私はスターになるから、あんたは私のドライバーになりなさい。そしたらあんたを好きになっちゃうかもね

(Baby you can drive my car. Yes I’m gonna be a star. Baby you can drive my car. And maybe I love you)」

なんて歌ってるポップな曲です