永井義男「幕末一撃必殺隊」感想 コミック「いちげき」の原作小説 | S blog  -えすぶろ-

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慶応三年……徳川幕府は政権を天皇に返上するも、あくまで武力による倒幕を目指す薩摩藩・西郷隆盛は幕府を挑発すべく、江戸市中にて御用盗なる浪士隊による略奪を行っていた。その御用盗に対抗すべく抜擢されたのは、幕臣でも浪人でもない、農民たちで………
『いちげき』(松本次郎/コミック乱連載中)でコミカライズされ、にわかに注目が集まった『幕末一撃必殺隊』(永井義男/絶版)が装いも新たに電子書籍になりました。日本の歴史において、常に搾取される立場だった農民から、“対御用盗”用に抜擢された身体能力エリートたち。新選組の訓練要項に従って鍛えられた、その男たちが宿願である侍退治に赴いたとき、何が起こる!?

 

最近読んだコミックで「いちげき」というのがあまりにも面白くて、6巻まで一気読みしました。次の7巻が最終巻となるそうですが、発売までまだ2ヶ月以上ありそう、でもラストが気になる・・・ということで、このコミックの原作小説「幕末一撃必殺隊」をKindle版で読んでみました。

原作とコミックのストーリー展開が全くの別物だったので、ある意味、このタイミングで読んで正解でした。コミックのラストのお楽しみが残りました。

そして、小説の方もまた、ものすごく面白かった!この小説は特に幕末の歴史とか新選組等が好きな人にとっては堪らない内容です。

西郷隆盛のあくまで武力倒幕を狙う策・考えが一転して、江戸城無血開城へと至った史実の背景には、実は勝海舟が企んだこんな凄い話があったんだよ・・・という内容の小説です。

登場人物も実在の人物、勝海舟、西郷隆盛、土方歳三、山岡鉄舟を始め、勝から依頼を受けた土方の密命で、農民たちを選抜し剣術を指南して「一撃必殺隊」を組織し率いるのが、新選組実在の隊士、和田六郎と島田幸之助。そして敵方の薩邸浪士隊を率いるのは尊皇攘夷の志士相楽総三、薩摩藩士伊牟田尚平と益満休之助(後に山岡鉄舟を西郷の元に送り届けた人物)。なので、とてもリアリティがありました。筆致もまるで吉村昭のようなルポルタージュ風の淡々とした語り口。

そして、たった6日間訓練を受けただけで「即席武士」として実戦に向かう農民の若者たちの戦闘シーンが物凄い迫力!この文章の迫力があったからこそ、あの「いちげき」の血みどろの戦闘シーンが生まれたのが分かりました。

本当に面白かった!