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彼女がバリカンを買って来て
「貴方!あんたの床屋代は高すぎるやん。ましてその頭ヘン!おかしい!!似合わない!!!そのパーマあかんでしょう?散髪代は要らんわ。これからは私がやってあげっから。」と、勝手に決めてしまった。しかし、過去一度も彼女から床屋代を貰った覚えは無い。床屋は自分で払っとる!


そしてついに散髪の日がやって来た。
俺のハゲ隠しのパンチパーマは、ハゲ丸出しの昨今流行であるアンシンメトリーの短髪タイガースカットに変わった。・・・・そして「これからずっと散髪代が浮くのね!とても好いわね。ザットライトそれは明るい!浮かせたお金で美味しいもの食べられるし、旅行もできるわね。旅行に行こうか?」と、散髪代の請求書がまわってきたのである。深層心理の請求には凄みがあった。
俺は憮然として彼女の顔を視る。。俺は硬直状態!そして、ふらふらと自分の部屋に戻り、暗い部屋でひとりうずくまりヒザを抱えた。
未来への失望は限りなく、散髪の出来のわるさと否応なく毟り取られてゆくだろう老後資金に、、虚しさと絶望でいっぱいになった。

それでもめげないこの俺!
立ち直りは早く、トラ狩りにされた俺は、しょうがなくではあるが、、俺の反抗的な行動に気分を害してカリカリしているトンガリ彼女と、サクランボ狩りと苺狩りへ出かけた。
トラ狩り彼氏と、尖がり彼女の珍道中が始まったのである。


7月11日、玄関を出る彼女は俺に旅行鞄を押し付け、ジョッピンカル。
ジョッピンカルとは北海道弁で「錠をかける」と言う意味だ。この言葉、なまら気に行ってる。
旅行は玄関を一歩出たとこから始まる。
何時も通る通路もエレベーターも違う景色に見える。うんな訳が無い。相変らずの景色だが、うきうきしながらマンションから出て青空を眺めると、もう旅行気分だ。もちろん彼女だけの感情ではある。
俺と言えば、辛い数日間休みなしの隷属が始まるのである。
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まずは車に乗り込み、小樽方面へ、、車は彼女の運転だ。
激昂型の彼女には迂闊なことは言えない。
車に乗ると、野性味が増す彼女は獲物を狙う豹のように目つきが鋭くなる。
もしも意見などしようものなら、「やかましいわぁ~、何をつべこべ言っとるん?黙っときぃな!頭かちわるでぇ~」と怒声を発し、前の車を次々に抜かしてゆく。
「韋駄天のお嬢」と言われた当時の荒い走り屋に戻ってしまうのである。運転には自信があるようだ。

小樽を通り過ぎ、余市も通り過ぎ、仁木町へ。
仁木町に入ると直ぐに派手で目立つ偕楽園という店が見えてくる。そこには何時もピンクな妖怪婆さんが眼鏡をかけて笑って迎えてくれる。
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この妖怪婆さんは、俺が北海道に引っ越してきた6年前から変わらない元気婆さんだ。きっとその前から元気だとは思う。
ひと目会ったその日から、恋の花咲くこともある、見知らぬ貴女、見知らぬ貴方に、デートを取り持つ、パンチDEデート。ってなもんで毎年この時期になると会いに遣って来る。七夕関係なのである。
「顔見知り優遇扱い」をされるように奮闘努力中である。が、一向に優遇はされない。
まず、最初の時は彼女と二人だった。
結構良くしてもらい、お土産までもらった。
次の年はトラちゃん夫婦と俺達で4名。
名物婆さん揃い踏みで愉しい時間を過ごした。
その次の年は息子家族4人と俺達で合計6名で、と、毎年の行事になってしまった。で、毎年続いている。今年は久しぶりに二人で、サクランボ狩りをたのしんだ。
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この偕楽園の栽培品種は、佐藤錦、水門、南陽、サミット、紅秀峰、月山錦、紅手毬、日の出などで、今の時期6月下旬から7月中旬までは佐藤錦、水門などで、7月中旬から下旬にかけて南陽が収穫時期である。
サクランボ狩りは、サクラの木に生る果実を摘まんで、口に入れるだけ、。洗ってないので少し気になるが、まだ誰もサクランボ狩りで食中毒を起こしていないし、死んだ例も無い。昼食代わりにサクランボだ、。
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サクランボ畑は網にスッポリ包まれており、鳥や小動物から守られている。木の大きさは縦横三畳~⒋,5畳くらいだ。木の陽の当たる部分で大きな色鮮やかなサクランボが甘くて美味しいらしい。
「あんたなぁ~脚立を持ってきて、あれを採ってぇな。」と彼女は桜の木の上の方を指さす。
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俺が脚立を持ってきてサクランボを取ろうと手を伸ばすと、、「それ違うやん、何聞いトンの?違ゃうで、その上の枝やぁ、ドン臭いなぁ、、やったろか?どいてや!」と俺は彼女からクビを言い渡された。
サクランボを一つ取っては口に入れ、口を尖がらせ種をプイと飛ばす。また一つ取っては口へ運び、種をプイと飛ばす。それを俺は下から眺める。
また一粒口に入れ、種をプイと飛ばす。
やがて俺の顔をめがけて種をプイとぶつける。
俺は怒ろうと思うが怒れない。
俺はしかめっ面をするだけで何もできない。

彼女は何度も何度も、プイ、ップイ、ップイと種をぶつける。
美味そうに食べては種を吐き出す。
俺はその種の餌食だ。
彼女は嬉しそうだ。

たらふくサクランボを食べた。そして彼女は飽きた。
それでも不味そうに食べては、種を俺に吐き出す。
不味そうに食べては、プイと種を俺にぶつける。
俺が怒っても、怒鳴り返される。
無関心だ。無表情の抵抗。
何時もの事だが、後になって思い直して悔しさが沸き上がる。
尾を引く不快な憎しみに縛られ、暗い部屋で独りうずくまりヒザを抱く。
ああ無情!イヤだじょう!駄目だじょう!

サクランボに飽きた彼女は、昼食が所望だと、、、なんてこった!
俺は逆らえず車に乗り込む。
土産にもらったサクランボを口に入れ、窓から外にプイと種を飛ばす。
一つ摘まんでは口に入れ、種をプイと飛ばし「わがままなおんなだ!」と心で怒鳴る。
一つ摘まんでは口に入れ「自分勝手な女だ!」と種をプイと飛ばす。
一つ摘まんでは口に入れ「我が強すぎ!」と種をプイと飛ばす。
一つ摘まんでは口に入れ「脛!」と種をプイと飛ばす。
一つ摘まんでは口に入れ「ふざけるな!」と種をプイと飛ばす。

「あんたなぁ何しとんの?常識ってのありひんの?そんなことしてしょうもない!」と彼女は怒声を浴びせる。さっきまで俺をめがけてサクランボの種を飛ばしてたやつなのに、、、しかし文句は言えない。

我が儘女は国道を飛ばす。
レストランを求めひたすら走る。
やっと見つけた道の駅、。
5号線沿いにあるキノコ王国へ、、

俺はキノコ汁に焼きおにぎり、彼女は仁木王国セットだ。炊き込みご飯、天ぷら、なめこ蕎麦、小鉢、漬物、さくらんぼソフトの6品セットだ、。

つづく