第1 設問1
1 裁判所がYの代理人AとXの間で契約が締結されたとの
事実を判決の基礎にすることは、弁論主義に反するため
できない。以下、詳述する。
2 裁判所は当事者が主張していない事実を判決の基礎に
してはならない(弁論主義第1テーゼ)。ここにいう「事実」
とは主要事実をいい、主要事実とは、権利の発生、変更、
消滅、障害という法律効果の判断に直接必要な具体的
事実をいう。
3 本件についてみる。
Yの代理人AとXの間で契約が締結されたとの事実を
基礎とするには、①YがAに代理権を授与し、②AがYの
ためにすることを示して③Aが契約を締結した事実、
つまり民法99条1項の要件を充たす事実を当事者の
いずれかが主張している必要がある。なぜなら、代理人
による法律行為の効果を発生させるために必要な主要
事実は、民法99条1項に規定されているため、本件でも
その要件を充たす事実が主張されているのならば、
代理人Aによる契約締結という法律効果を基礎とする
ことができるからである。
しかし本件ではX及びYは、いずれも上記事実について
主張しておらず、両当事者とも問題にすらしなかった。
そのため、これを判決の基礎とすることは弁論主義に
反するためできない。
たしかに両当事者とも問題にしなかったので、判決の
基礎としたとしても不意打ちにはならず、いいのでは
ないかと考えることもできそうである。
しかし、弁論主義というのは、民事訴訟法の根幹となる
考え方の1つであり、その内容まで確立されているので
あって、これを当事者が問題としなかったからといって
覆してしまうようでは、煩雑になるおそれがでてくる。
そのため、せめて裁判所が釈明権を行使(149条1項)
した上で当事者に主張させるなど、ひと手間加えなければ
ならないと考える。
4 以上より当該事実を判決の基礎にすることはできない。
以上