ひとつ、質問があります。

 ごく普通の、何でもないコップを思い浮かべてください。

 新品で、まだ使っていものです。

 それをタダでもらえるとします。

 そのもらったコップは、いくらくらいの値段だと思いますか?



 値段を思い浮かべたら、次に二つ目の質問をします。

 ごく普通の、何でもないコップ。

 上で思い浮かべたものと、同じで構いません。

 新品で、まだ使っていないもの。

 それをあなたが、所有しています。

 それを、誰かに売るとします。

 さて、いくらくらいの値段をつけるでしょうか?



 値段が決まったら、上の二つの値段を比べてみて下さい。

 売る方の値段の方が、高くなっていないでしょうか?

 同じコップであれば、同じ値段にするのが妥当ですが、そうはしない場合が多いです。

 人間は、自分が持っているものは、より高い価値を感じる習性があるようです。



 もう一つ、似たような別の事例を上げます。

 アメリカで行われた実験です。

 何人かの人が、宝くじをそれぞれ一枚づつ持っています。

 それを、別の人と交換してもいいかどうか聞いてみます。

 交換してもいいという人は、全体の6割くらい。

 残りの4割くらいの人は、交換するのを嫌がります。

 宝くじの当たる確率は変わるはずないのに、嫌がる人がいるというのが面白いですね。

 また、交換するかどうか聞くときに、宝くじを持っている人たちに質問をしてみました。

「あなたが持っているその宝くじ、当たると思いますか?」

 答えを、自分のは当たると思っている人、当たらないと思っている人、交換してもしなくても当選確率は変わらないと思っている人の3パタンで集計します。

 結果は、当たると思っている人は、8割方、交換するのを嫌がります。

 当たると思っていない人は、3分の2が交換を嫌がります。

 交換してもしなくても変わらない、と考える人も半分くらいは交換を嫌がります。

 傍目には、当たらないとか、変わらないと思うのなら交換すればいいと思うでしょうが、そうはならないのですね。



 このようになる結果は、以下の通り説明されています。

 もし、自分の持っている宝くじが当たっているとすれば、それを交換して失った時はショックが大きい、

 逆に、交換に応じなかった結果、当たりを逃したとしてもそれはまだ我慢できる。

 ということです。


 結局、何かをして損失を被るよりも、何もしなくて得しない方が良い、

 同じ状態でいることの方が居心地がいい、

ということですね。

 人間は保守的にできているのです。


 確かに、何か変わったことをすると、たいていの場合失敗します。

 簡単に成功するのであれば、すでに先人がやっているはずですから。

 しかし、今までにないことをしなければ、進歩も生まれません。

 従って、なんども失敗しているうちに、成功に辿りつくということになります。

 結局は、失敗は成功の元という言葉通りなのです。



 ある偉い人は、誰かが失敗したという話を聞かされると喜ぶそうです。

 そしてアドバイスするそうです。

「おめでとう!これでこの方法はダメだということがわかった、

 正しい方法に一歩近づけましたね。

 この調子で頑張ろう!」

 私達も、このくらいの度量を持って、チャレンジしていきたいものです。