転石、苔生さずということわざがありますね。

 もともと、外国から入った言葉だそうです。

 意味はご存知の通り。

 落ち着きなく動いてばかりいると、コケも生えない(もっとどっしりと構えなさい)という意味。

 ですが、同じことわざでも、米国では違う意味なのだそうです。

 活発に動いていないと、コケが生えてきてしまいますよ(だから、常に動き続けなさい)という意味なのだそうです。

 正反対ですね。

 お国柄がなんとなく見えてきて、面白いです。



 どちらがいいとか悪いとか言えませんが、例えば職人さんの世界とかであれば、日本の意味の方がしっくりきますね。

 この道一筋、ン10年とか言われると、「ほー」と感心してしまいます。

 しかし、これは逆に言えば、何十年も同じことをするのは至難だということ。

 世間の環境の変化により、続けたくても続けられなくなります。

 世の中は常に変化し続けるのです。



 また、たとえ周りの環境が変わっていないとしても、同じことしているとジリ貧になってしまいます。

 収益逓減の法則というのがあります。

 もともとは、農作物を作るときの収穫量に関する用語です。

 ある農作物について、ある肥料を入れることにより、収穫量が10%増えたとします。

 しかし、だからといってその肥料を2倍に増やしても、収穫量は20%も増えません。

 17%とか15%とか、投入した分に見合わない程度にとどまります。



 これは農作物に限らず、いろんな分野に適用できます。

・あるお店である広告を打って売上が10%伸びた、

 だからと言って、その広告を2倍のお金をかけて打っても売上は20%も伸びない。

・楽器が好きでピアノの練習をした、

 最初の頃は、ほんの少し努力するだけで簡単に上達した、

 でも、ある程度うまくなると、同じだけ努力しても上達は目に見えて遅くなる。



 このように、同じことをやっているのでは、満足できる結果は得られなくなってきます。

 こうした点から何か新しい試みをすることが必要となります。

 従って、この道一筋ン10年といっても、実は全く同じ業務内容で何10年もやっているとは限りません。

・その時々の流行に応じて、味や香りを変えたお酒を醸造する造り酒屋さん

・伝統工芸の技を生かしつつ、洋風の造形を取り入れた陶芸職人さん

・元々、繊維製品を製造していたのに、多角化によって医薬品や新素材が主力製品となった大手メーカー

等々、挙げていけばきりがありません。

 彼らは、元々行っていた仕事をベースにしつつ、それを生かして新しい分野に進出したり、新製品を開発していきます。



 新しいことをするのは、大変ですし、失敗のリスクも増えます。

 誰しも失敗は怖いですし、周囲の人から反発を買ったり、出る杭を打たれたりすることもあるでしょう。

 しかし、リスクが増えれば、その分成功したときのリターンも増えます。

 どうしても、リスクが大きすぎると感じる場合は、まずは小さく初めてみましょう。

 成功すれば、徐々に拡大すればいいだけです。

 まずは、今まで当たり前と思っていたことを、少し視点を変えて、やり方を見直してみることから始めてみましょう。