最近やや報道が下火となっりましたが、マクドナルド、かなり悲惨ですね。

 異物混入とか、不衛生な調理場、賞味期限切れ商品等、これでもかというくらい問題が噴出していました。

 それ以外では、輸入食品の汚染や食品偽装問題などは最近あまり聞きませんね。

 もうそろそろ次のが出てくるのでは、という気もします。

 このような明らかな不良品は論外ですが、人によっては、認められた範囲内で農薬を使用した野菜とか、保存料や着色料を使った食品などに対する不信感も根強いものがあります。

 しかし、その一方で、安ければ何でもいいという人も結構います。

 私たちは、好むと好まざるに関わらず製造過程がしっかりと把握できていない食材を食べています。

 このような状況下で、食品の持つリスクをどのように考えれば良いのでしょうか?


 まず、こうした問題の際には、言葉の定義をはっきりと決めることが重要です。

 ここで問題となるのは、リスク、ハザート、ベネフィットの3点。

 カタカナばかりで恐縮です。

 この中で、ハザードとは危険となる原因の可能性です。

 リスクとは危険となる原因にそれが暴露する可能性を掛け合わせたもの。

 ベネフィットとは何らかのプラスとなる効果です。


 農薬を使った野菜を例に考えてみましょう。

 その農薬を人間が所定量服用すると、何%かの人が嘔吐、頭痛を催し、慢性的に摂取すると発がん性があるとします。

 これらの症状が発生するのが、ハザードとなります。

 リスクは、これに対してその野菜を食べて実際に発症する可能性を掛け合わせたものです。

 もっと細かく言えば、人体に影響が出る程度に違法に使用され、かつそれが収穫後まで残留し、かつそれが抜き取り検査を通り抜けて店頭に並んで、それをさらに影響が出るレベルまでの量を食べる可能性となります。

 こうして考えると、リスクは概してかなり小さそうな気もしてきます。

 最後のベネフィットは、この農薬を使うことにより、作物の収穫量が増えて値段が安くなったり、害虫による虫食いがなくなること。

 これらを勘案して選択することになります。

・・・と、こう書くと、往々にしてリスク回避が絶対に優先、ベネフィットは犠牲にするのもやむを得ないと考えがちです。

 健康を害したら取り返しがつかない、という気持ちはもっともですが、過度に安全性を追求しすぎるのは問題があります。

 一つは、無駄だということ。

 十分リスクの低いものを、さらに下げる必要はありません。

 しかし、実際にそういうこともありました。

 国産牛でBSE牛が発生した時の対応がその一例です。

 問題が発生してしばらくすると、発生頻度から見て、100年間に1人の健康被害を受ける可能性もないということがわかりました。

 しかしそれでも異常部位を除去し、さらに焼却することにしました。

 そして、さらにその上、その後もずっと全頭検査し続けていました。

 専門家からは全頭検査をする科学的意味はなかったと言われています。


 もう一つ問題となるのは、あるリスクを回避しようとすることにより、ベネフィットが無くなる問題。

 例としては、昔、堺市でおきた学校給食のO157による中毒事件があります。

 それ以前は、使用する野菜は、殺菌の為に次亜塩素酸ナトリウムで消毒をしていました。

 しかし、消毒時に発ガン性物質のトリハロメタンが生成する可能性が喧伝され、消毒を取りやめていました。

 それがO157中毒の原因の一つだと言われています。

 ちなみに、今では再び次亜塩素酸ナトリウムで、じゃぶじゃぶ洗っているそうです。



 このような問題が発生すると、得てして、難しい化学物質名だとかややこしい統計計算とか、我々一般人には理解しがたいところに話が及びます。

 そして、人間には理解できないものは、リスクをより強く意識する傾向にあります。

 さらに、昨今は情報であふれかえっていて、どれが正しい情報かわからないことも問題です。

 我々ができることは、まずはリスクのみ煽る一面的な情報しか発信していないものは、鵜呑みにしないことです。

 テレビのワイドショーばかりよく批判されますが、新聞などでも結構ありますね。

 リスクとベネフィットを冷静に見つめることが大事です。

 それに、上にあげたような統計的、科学的根拠が理解できればそれに越したことはありませんね。

 もしそれが無理でも、このような考え方があることは理解しておきたいです。