最近、脱法ハーブが、危険ドラッグという新名称に変わったそうですね。

 「脱法ハーブ」では、危険性が伝わらない、とのこと。

 たしかに、犯罪とか交通事故とか、色んなトラブルの原因となっているようです。

 ところで、この脱法ハーブの「ハーブ」はもともと薬草とか香草という意味ですね。

 草木が作り出す成分の中には、なぜか動物に強い生理作用をもたらすものがあります。

 この元となる物質を、アルカロイドといいます。

 今回は、このアルカロイドについてです。

 アルカロイドは直訳すると「アルカリのようなもの」という意味です。

 もともとの定義としては、植物由来で、アルカリ性で窒素を含む化合物で、生理人間の体に強く効くものを指しました。

 しかし、新しく色んな物質が発見されるに従って、必ずしもアルカリ性でなかったり、植物由来でなかったりするのも出てきて、定義は曖昧になってきています。



 具体的に、人体への効き方としては、神経に作用するものが多いです。

 例えば、神経を興奮させる働きのあるものとして、麻薬とか覚せい剤、
 逆に中枢神経の興奮を鎮めるものとして、麻酔や鎮痛剤、解熱剤など。

 これ以外にも、抗菌剤、血圧降下活性剤、ホルモン活性剤などさまざまあります。

 アルカロイドのもっとも有名な例としては、何と言ってもモルヒネですね。

 ケシの実からアヘンを抽出し、それを生成して出来ます。

 日本でも古くから利用されています。

 無論、アルカロイドなどと認識していたわけでなく、中国から漢方薬として伝わってきたものです。

 遣唐使で中国から持って帰った漢方薬のうちの一部は、現在も正倉院に保管されています。

 そして、さらにその一部は、現在でも有効成分が残っているそうです。

 現存する最古の生薬とされています。

 また、江戸時代の華岡青洲というお医者さんも有名です。

 トリカブトの塊根を乾燥させたブシという漢方薬と、チョウセンアサガオというナス科の花から、世界で初めて全身麻酔に成功させました。



 アルカロイドを多く含む植物としてはケシ科が有名ですが、他にも色んな種類の植物に含まれています。

 馴染みの深い植物の種類としては、ユリ科、イネ科、ナス科、マメ科などに多く含まれるとされています。


 アルカロイドの利用方法としては、薬物、毒物、染料、嗜好品などが多いです。

 毒と薬は紙一重ですので、どちらにも使えます。

 例えばトリカブトの持つ、トリカブト族アルカロイドは強い毒性がありますが、適正な使用量とすることにより、新陳代謝を高めたり、身体の麻痺、とう痛を抑える働きがあります。

 また、トウガラシの辛味成分のカプサイシンもアルカロイドの一種です。

 胃腸の健康を保ったり神経痛、筋肉痛の薬として使われていました。

 しかし、同時に粘膜を傷つけるため、毒薬とか目つぶしとして使われていました。

 植物にとってのアルカロイドの役割はよく分かっていません。

 動物に、食べられるのを防ぐため、とも言われていますが、動物側もこれに適応していて平気で食べてしまいます。

 人間などは、薬に使ったりするので、植物からすればかえって被害が大きいですね。



 それにしても、植物が作ったものが、動物に意外な効き方をするというのも不思議なものですね。

 そういえば、薬という言葉の語源も、神秘的なものという意味の「奇し(くし)」から来ているそうです。

 今後、科学技術がどんなに発達しても、生き物の身体はいつまでも神秘であり続けるのかもしれませんね。

 <参考にした本>

船山信次 アルカロイド 共立出版


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